魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

『問題のない私たち』

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コミックス第3巻には澪や麻綺とはまったく違うタイプの問題美少女が登場。画像はブックオフ・オンラインより。

今朝、GyaOで映画版の『問題のない私たち』が配信されているのを知って、先ほど鑑賞しました。ちょうど見たかったのです。
映画の出来栄え自体はコミック版に比べると格段に劣りますが、『問題のない私たち』のあらすじをつかむ程度には役に立つかとも思われるので、ここでご紹介することにしました。
『問題のない私たち』に関する詳細は日本語版ウィキペディアの記事をご覧下さい。要約しますと、舞台はとある女子中学校の一学級。クラスの親分格と自他ともに認め、気の弱いクラスメイトに対してさかんに「いじめ」を繰り返していた主人公・笹岡澪が、転入生・新谷麻綺の登場によってボスの座を追われ、かつて自分が行なっていたのと同程度の、いやそれ以上にむごたらしい「いじめ」の犠牲者となるというお話です。実はウィキペディアにもあります通り、コミック版は3巻に分かれておりまして、上の話はその第1巻を占め、第2巻・第3巻はその後日談となっておりますが、どれもなかなか過激な内容です。自分は先日体調を崩して少し大きな病院を訪れた際、待合室でたまたまこの第3巻を手に取って激しい興味を覚え、その後アマゾンで全巻購入して読みふけり、大変深い感銘を受けました。ちなみに映画は前半が第1巻、後半が第2巻の内容を描いており、ために両方とも充分にこなし切れていないうらみがあります。
この作品、まず目を引くのはやはりこの凄惨きわまる「いじめ」の描写ですね。例をあげましょう。転入生の新谷麻綺に優位を奪われたヒロインの笹岡澪は、それでも「いじめ」に耐えながら毎日けなげに登校しますが、ある朝激しい腹痛(恐らく神経性の)を覚え、学校を休んでしまいます。明くる日もお腹が痛かったが、二日も休んでしまうと二度と登校出来なくなる(そういう状況に追い込まれる)ことをみずからが「いじめ」の加害者であった経験から知っているので、休めません。
教室に入ると、自分の机のまわりをクラスメイトたちが取り囲んで泣いている。机の上にはきれいな花と、黒いリボンをつけた自分の写真が飾ってあるのです。
「やめてよ」と叫ぶと、皆わざとらしく大きな悲鳴をあげ、
「何で成仏できないの?かわいそうに」
これにはさすがに打ちのめされたヒロイン。泣き出すかと思いきや、腹を抱えて笑い出し、そのままふらふらと屋上にのぼっていって、飛び降り自殺を図ります。
この作品、「いじめ」の描写が目を引くことも確かですが、原作小説の作者も「『いじめ』がテーマの作品ではない」とコメントしている通り、単なる「学校問題」のルポルタージュと言うよりももう少し奥の深い、何か人間性の根源に迫るといった趣きがあり、鑑賞に堪えます。特にコミック版はきわめて洗練された表現で、あくまでも「青春もの」の少女マンガというジャンルを逸脱することなく、少女たちの内面の醜さを見事にえぐり出しています。何よりもこの悪役・新谷麻綺の表情のおっかなさ(と美しさ)はこたえられません。
映画の方は、まあ、アイドル出演作というのが売りなので、仕方ありませんが、ただ一人、沢尻エリカだけは、私はこの人のことはよう知らんのですが、この天使と悪魔の二つの顔を併せ持つ新谷麻綺という美少女を、なかなか巧みに演じていると感じました。何かこう、天性のものがあるようですね。
以上、興味を持たれた方は、まずGyaOで無料動画をごらんいただいて、それからコミック版をお求めになるとよろしいかと存じます。コミック版は新品が手に入ります。原作小説(コバルト文庫)は絶版となっておりまして、私は図書館で借りて読みました。


映画版『問題のない私たち』の予告編。映画が公開されたのは2004年ですが、DVDの売上増を祈念して外国の方が2010年にアップロードされたということです。
黒川芽以_問題のない私たち_劇場予告


映画「問題のない私たち」 [DVD]

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問題のない私たち (コバルト文庫)

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