
(別題「パリにふたたび人が住む」)
着いたぞ 意気地なしどもよ 汽車からどっとあふれ出ろ
朝まで野蛮人たちが占拠していた大通り
太陽の 烈火のごとき肺の息吹きで一掃された
西洋圏で随一の「花の都」を見るがいい
進め 戦火の逆流は未然に封じられている
船着き場あり 大通りあり さらに進めば家並みの
上にふんわり乗っかった 眩しいほどの青い空
そこには昨晩 紅の砲火が 星をちりばめていた
亡き宮殿は 板張りの凹所の奥に秘めておけ
肝をつぶした「在りし日」が 君たちを開眼させる
のたくる赤い髪の群れ 君たち 帰還した市民
やつれた奴ら 馬鹿になれ でないと馬鹿に見えるから
盛りのついたメス犬の一味が 湿布薬を食う
黄金の御殿が泣き叫ぶ 「盗んでくれ」と呼んでいる
くらえ 街路の彼方から 大痙攣をともなって
歓楽の夜のお出ましだ 惨めな酔っ払いどもよ
飲め 目も眩む痛烈な光がさっと差し込んで
垂れ流される贅沢を 君らのそばに探すとき
無言で椅子に腰かけて ポカンと 白い遠景を
見ながら 空の盃に よだれを垂らすことなかれ
滝と流れる尻を持つ女王陛下に乾杯だ
苦渋に満ちた酔漢の「ひっく」に耳を傾けよ
炎の夜に飛び込んで ぜいぜい言っている白痴や
老いぼれたちや盲従者 追従者らの声を聞け
汚物まみれの心臓よ 目も当てられぬその口よ
もっと動かせ 悪臭を放って止まぬその口を
テーブルで待つ このような麻痺状態のための酒…
征服者らよ 羞恥など胃腸とともに流し去れ
もっと広げろ鼻の穴 もっと催せその吐き気
苛烈な毒に その首の帯を どっぷり浸すのだ
絞まる両手を 君たちの無防備すぎる首筋に
かけて詩人はこう諭す「勇気を出して馬鹿になれ
君らはパリの胎内を探りながらも怖いのだ
パリのさらなる痙攣が 悲鳴とともに膨らます
胸の激しい圧力で 胸の上なる君たちの
スキャンダラスな愛の巣を 窒息させはしまいかと
梅毒患者 王と道化 腹話術師とその人形
君らの霊や肉体や ふざけた服や毒舌が
恥じらいを知るパリにとり いったい何の意味がある
パリは君らを振り捨てる うるさいだけのクズどもよ
そして君らがぶっ倒れ 腹をグーグー鳴らしつつ
『消化器官が死んでいる お金 お金』とわめいても
戦火によって膨らんだ両胸を持つ『緋の淫婦』
パリは君らをかえりみず 固く拳を握るのだ」
パリよ 暴徒に囲まれた君の素足が舞ったとき
凶刃による刺し傷を その満身に負ったとき
その澄み切った瞳孔に 野獣の不死と再生の
ほんの微かな兆候を残して 横たわったとき
惨禍に耐えた大都市よ 死んだと言っていい都市よ
「未来」に向けて投げられた 首と二つのおっぱいは
蒼白な顔面の前 数十億のドアを開け――
悲苦が転じて福となる日々が来るかも知れない都市よ
電気ショックで 大いなる苦痛に復帰した死体
君はふたたび「生」という猛毒を飲む 血管に
灰色をした蛆虫の群れがあふれて はっきりと
脈打つ君の全身を 冷たい指がさまよい歩く
そうして これは悪くない その体内の灰色の
蛆虫たちも「前進」の息吹きをもはや妨げぬ
夜の鳥らは啄めど 星住む蒼天の高みより
黄金の涙が降りそそぐ 女人像柱の目は曇らない
そのような君を見るのは おぞましいにもかかわらず――
いかなる都市も 美しい地上にあって このような
くさい腫瘍となりはてた例はなかった にもかかわらず
パリよ 詩人は君に言う 「君の『美貌』は無敵だ」と
嵐は 君に崇高な詩の栄冠をたまわった
全宇宙的運動が君を助ける 選ばれし
「都」よ 君の絶唱の沸騰 そして死の怒号
その大いなる角笛の芯に集めよ 絶叫を
詩人はむしろ採るだろう 悪人たちのすすり泣き
受刑者たちの怨恨や 呪われびとの抗言を
詩人の愛のまなざしは女子をびしびし鞭で打つ
詩のリズムは弾むのだ「どいつもこいつも地獄に落ちろ」と
――パリの皆さん 何もかも元通りです 狂宴は
昔ながらの売春宿で 相も変わらず瀕死のあえぎ
白みゆく青空のもと 精神病のガス灯は
今も真っ赤に血塗られた塀を 不気味に照らすだけ
(1871年5月)
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