魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

(日本語訳)アルフレッド・テニスン「涙よ(Tears, Idle Tears)」

テニスンがこの詩の着想を得たとされるティンタン修道院の廃墟。ウィキメディア・コモンズより。

涙よ 理由わけのない涙よ お前は何を意味するのだろうか
涙よ それは何かしら神聖な絶望感から
心に現れ 目にこみ上げてくる
実り多き秋の小麦畑を眺め
もう二度とない日々を思いやる時

われわれの大事な人々を乗せて 水平線の彼方から
やってくる船の白い帆の最初の輝きのように新しく
大事な人々を乗せて 水平線の彼方へと
消えてゆく紅い帆の最後の輝きのように悲しく
もう二度とない日々は新しく そして悲しい

その怪しくも悲しいことは 暗い夏の明け方
今まさに息を引き取らんとする者の
目に映る窓がゆるやかに四角い光へと変わる時
耳もとに響く朝一番の小鳥のさえずりのごとく
もう二度とない日々は怪しく そして悲しい

死後に回想されるキスのように切なく
自分のものではない唇の上に あり得ない空想ゆめによって
擬せられるキスのように甘美で 恋のように深く
初恋のように深く あらゆる後悔に心乱れて
生の中の死だ もう二度とない日々とは