(一つの)夢(A Dream)
暗い夜の闇の中で
よろこびの日々とふたたびめぐり会った
そんな私の胸を引き裂いたのは
昼間に覚めて見た夢だった
ああ 背後を照らす
ひと筋の光のもとにひしめいている
思い出に心奪われた者にとって
現実など夢に過ぎない
あの聖なる夢は あの聖なる夢は
私が全世界を敵に回した時も
孤独な守護霊のように
優しい光で力づけてくれた
たとえそれが嵐と闇のかなたに
ゆれる微かな影に過ぎなくても
あれよりも美しいものはあり得ないのだ
「真実」の太陽のもとでは
(幾つかの)夢(Dreams)
ああ 私の少年時代が覚めない夢だったらよかったのに
いっそ大人になる前に死んで 「永遠」の朝が来るまで
ずっと眠って夢みていられればよかったのに
たとえその夢が悲しみ限りなきものであっても
この冷たい下界 ここに生を享けてよりこの方
心が情熱のカオスのまま成人し 老いる身にとって
目覚めて生きる退屈な現実よりもよっぽどましだ
とはいえ 少年時代に夢みたような
永遠に続く夢を夢みることができたならば
堕地獄は覚悟せざるを得まい
なぜなら私はかつて夏空のもと
光り輝く草原で快楽をむさぼり
私自身の家を遠く離れた
空想の世界で みずからの心を
私の想像上の人々とともに遊ぶにまかせ
他を一切かえりみなかったから
一度 ただ一度だけ 私には忘れられない
ある異常な瞬間に ある邪悪な力が
私をとらえた それは冷たい夜風で
その残像は心に焼きついた でなければ
それは空高くかかった月の光が
眠っている私を冷やかに訪れたのか
でなければ 星の光か ともあれ
その夢は夜風に似ていた――吹き過ぎよ
私は幸せだった たとえ夢の中だけでも
幸せだった 私はこのテーマが好きだ
夢よ その生命を彩る様はさながら
少年時代のもっとも想像力豊かな頃に
想像したよりももっと美しい姿で
「天国」や「愛」や われわれのすべての所有物を
酔眼に映してくれるイメージの上の戦い
実像と虚像が交わす不思議な戦のようだ
夢の中の夢(A Dream Within a Dream)
その額にキスをさせておくれ
そして今お別れにあたって
これだけは言わせておくれ
「あなたは夢を見ていたのだ」と
君が言うのはその通りかも知れない
けれども愛が壊れたのが
一日にしてであろうと 一夜にしてであろうと
寸時にしてであろうと 瞬時にしてであろうと
私が一切を失ったことに変わりはない
われわれに見えるもの 見える気がするものは
すべて夢の中の夢に過ぎない
海のほとりを訪れ
波打ち際にたたずむ
手にはほんの少しの
砂粒を握りしめて
ほんの少しの砂粒
それが指の隙間からさらさらとこぼれ落ちて
私は涙を流す 涙を流す
おお神よ もっと強く
つかんで離さないわけにはゆきませんか
おお神よ たとえひと粒なりとも
心ない波から救うことはできませんか
われわれに見えるもの 見える気がするものは
すべて夢の中の夢に過ぎないのでしょうか
M――へ(To M—)
私は平気です みずからの宿命に
世の常ならぬものがあろうと
長年の愛が一時の激情で
終わっても悔やみはしない
自分がこの世で一番みじめな男であることで
苦しんだりもしません
ただ寄る辺のない私の身の上を
あなたに心配されるのが苦しいのです
私は平気です わがよろこびの泉が
涙となってほとばしっても
平気です 久しい日々がたった一度の
キスの衝撃で干からびても
平気です 二十回の春の訪れで
咲いては散った花びらが
雪の季節の悲しみの重みとともに
わが亡きがらの上で朽ち果てても
平気です 私のお墓に草が生えても
草が(茂るがいい!)伸び放題でも
お嬢さん ただあなたが忘れて下さらないことで
一人になれないのが悲しいのです