魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

エドガー・アラン・ポー「夢の中の夢(A Dream Within a Dream)」他二篇

夢の中の夢(A Dream Within a Dream)*1

f:id:eureka0313:20200726180829j:plain

米女優エヴァン・レイチェル・ウッドの背中のタトゥー。ウィキメディア・コモンズより。

その額に口づけをさせておくれ
そして今お別れにあたって
これだけは言わせておくれ
「あなたの青春は夢だった」と
君が言うのはその通りかも知れない
けれども望みが絶たれたのが
一日にしてであろうと 一夜にしてであろうと
束の間にしてであろうと 瞬時にしてであろうと
それで絶望の大きさが変わるものだろうか
われわれに見えるもの 見える気がするものは
すべて夢の中の夢に過ぎない

海のほとりを訪れ
波打ち際にたたずむ
片手にはほんの少しの
金色の砂粒を握って
ほんの少しの砂粒
それが指の隙間からさらさらとこぼれ落ちて
私は涙を流す 涙を流す
おお神よ もっと強く
つかんで離さないわけにはゆきませんか
おお神よ たとえひと粒なりとも
心ない波から救うことはできませんか
われわれに見えるもの 見える気がするものは
すべて夢の中の夢に過ぎないのでしょうか


エリュシオン・フィールズ(Elysian Fields)「Dream Within a Dream」。歌詞は以下の通り。

Take this kiss upon the brow!
And, in parting from you now,
Thus much let me avow-
You are not wrong, who deem
That my days have been a dream;
Yet if hope has flown away
In a night, or in a day
In a vision, or in none
Is it therefore the less gone?
All that we see
All that we seem
Is but a dream within a dream.

I stand amid the roar
Of a surf- tormented shore,
And I hold within my hands
Grains of the golden sand-
Oh how they creep
Through my fingers to the deep,
While I weep-while I weep!
Oh god! can I not grasp
Them with a tighter clasp
Oh god! can I not save
One from the pitiless wave?
Is all that we see
Is all that we seem
But a dream within a dream?


Elysian Fields - Dream Within A Dream

Queen of the Meadow by Elysian Fields

Queen of the Meadow by Elysian Fields

 

M. L. S.へ(To M. L. S——)*2

f:id:eureka0313:20200726150556j:plain

マリー・ルイズ・シュー夫人。eapoe.orgより。

あなたと居ると朝が来たような気がする
だからあなたが去ると夜の訪れを感じる
それは聖なる太陽の姿が大空のどこを探しても
見当たらない夜―― 私たちは涙を流しながら
あなたを讃美してやまない 希望のため いのちのために
それよりも誠意への 美徳への 人間らしい気持ちヒューマニティへの
とうに忘れられてしまった信仰のよみがえりのために――
「絶望」の汚らわしいベッドの上に横たわって
死に瀕していた私たち たちどころに癒されました
「光あれ」という優しいささやきによって
それはあなたがその明るいまなざしを投げかけてくれた ただそれだけで
成就してしまった その言葉によって――
あなただけが頼り―― その感謝の気持ちは
ほとんど崇拝の念にひとしい―― そんな人々の中でも
一番の正直者 もっとも熱烈な信奉者
この拙劣な詩を書いた男のことを忘れ給うな
これを書きながら 私はぶるぶると震える
自分の霊がいま天使の霊と交信していることを思って

ひとりぼっち(Alone)*3

幼いころから 私は人と
違っていた 私は人と
違うものを見ていた 人が心を奪われる
対象に 私が心を奪われる
こともなく 人と同じ理由で
悲しまず 人と同じ調子トーン
よろこばず そうして私が愛するもののすべては
私がひとりぼっちで愛していたのだった
幼いころ 私はこの数奇きわまる
生涯の幕開けに ありとあらゆる
善きもの 悪しきものの最深部から
今なお解けないミステリーを見つけた
激流から また泉から
真っ赤な断崖絶壁から
私の周囲を 金色に輝きながら 
めぐりゆく秋の太陽から
わがかたわらを閃きながら
通り過ぎてゆく稲光りから
雷鳴から また嵐から
また私の目には(その日の空は
その一点以外は晴れ渡っていたのだけれど)
悪魔デーモンと見えたあの雲からも

E. A. Poe
Baltimore, March 17, 1829

*1:グリスウォルド編『エドガー・アラン・ポー後期作品集』第二巻(1850年)に拠る。

*2:グリスウォルド編『エドガー・アラン・ポー後期作品集』第二巻(1850年)に拠る。

*3:『月刊スクリブナー』誌1875年9月号の載するところ。