はるかな叫び
われ知らず 閉ざされた目を向けている 方角は西
山を越え 海を渡ってこだまする はるかな叫び
願わくは 入院中の人形に 窓の木漏れ日
願わくは 店をひらいてうるおった 人魚たちに死
われ知らず 流れに沿ってくだりゆく 橋のない岸
艶やかな蛇のからだに絡みつく 艶やかな蛇
今日もまた 白いお城のまうしろで はたらく放火
颯爽とすべらせる足 時としてつまずく小石
時として まぶたのうらに道を見る 優しいわたし
うるおった性器に恥を ひからびた便器に花を
今日もまた くびれた腰に絡みつく 狂おしい帯
時として とてもきれいな血を流す わたしの素足
姉指と妹指で挟みたい あなたの鼻緒
山彦の声のまにまにたずねゆく 旅のよろこび
この才女
この才女 絶世の美女 その著書はすべて発禁
新作の執筆依頼 業者から常に殺到
業界の神出鬼没選手権 常に一等
ふと魅せる一糸まとわぬ全貌に みんな失禁
その著書は隠れた名著 官憲はうらで解禁
図書館に 見当たらないというだけで 武士が抜刀
便所では 見せびらかしてあるだけで 女子が卒倒
業者には甘い税金 読者には重い罰金
紙という鏡に映るその姿 まるで爆弾
読む者の心の底に着弾し 光を放射
この世界 魔女も聖女もことごとく 愛し合うだけ
この才女 絶世の美女 連載はすべて中断
未完でも 売れば売るほどうるおって うれしい業者
この社会 過去も未来もわからない 今があるだけ