魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

訃報:神田沙也加(1986-2021)

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以下に抄訳する英文記事が私のスマホに届いたのは神田沙也加さんが亡くなってから一週間後のことでした。さすがに全訳はマズいと思うので、かいつまんでご紹介して、故人を偲ぶよすがとしたいと思います。原文はこちら。画像はすべて同記事から。


昨日亡くなった女優の神田沙也加は舞台俳優、映画女優、アニメ声優だけでなくアニソン歌手としても活躍したマルチタレントとして記憶されるだろう。実は彼女はそれ以上の存在で、複数の変名を持つ作詞家であり、彼女自身のレコードレーベルのプロデューサーでもあった。とはいえ、その短い生涯を通じて、彼女は有名人の娘というレッテル貼りと必死に戦った。
彼女は日本のメディア王室に俳優・神田正輝と歌手・松田聖子の一人娘として生を享けた。両親は彼女を秘密裏にロサンゼルスの学校へと送り、彼女はそこで短編映画『おはぎ(Bean Cake)』(1999)への出演を果たして、この映画はのちにカンヌでパルムドール賞を受賞した。その後、彼女は何度か本名を伏せたままアーティストとして世に出ようと試みたが、うまくいかなかった。
母・松田聖子の持ち歌の一つから採った「ALICE」というペンネームで、彼女は聖子の「恋はいつでも95点」の歌詞を書いたが、この事実はしばらく公表されなかった。彼女の歌詞は一人の少女の疑問を巧みにとらえていて、その少女にとって恋はそれ自体が演技パフォーマンスであり、鏡の前での緊迫した準備であり、衣装選びの苦悩であり、デートの相手の失笑を買いはしないかと常にびくびくしながら公共の場に出ることである。
世紀の変わり目に、彼女は日本のスターの卵が通常要求される屈辱に服した。それは一連の広告放送を広めるためのフックとして用いられたミーハー向けのシングルで、その中で彼女はグリコのアイスクリームがどんなに冷たいことかと感激してみせた。とはいえ、彼女はその歌詞を自分で書いた。「SAYAKA」名義で、彼女は更に数枚のシングルを出し、また高倍率のオーディションを突破してミュージカル「イントゥ・ザ・ウッズ」のリバイバル公演で役をもらった。長寿テレビ番組「水戸黄門」の最終回に出演したあと、祖母を通じて彼女が休養を取ることが突如発表された。彼女は18ヶ月にわたって姿を見せず、その間ウェイトレスとして働いていた。
2006年、彼女は「PawPaw」および「上原純」の名を用いて母親の二ユーアルバムの歌を作詞作曲したが、この事実は「ALICE」のペンネームの時同様、何年も伏せられたままだった。この物語は彼女のキャリアの中心にある永遠のジレンマを理解するのに役立つ。彼女は母親の長い影から逃れようと絶えずもがいていたが、一方で「親の七光り」的恩恵に浴することもあった。2011年、「紅白歌合戦」でクラシック・ヒット「上を向いて歩こうSukiyaki)」を聖子とデュエットした彼女のパフォーマンスは、それ自体は彼女の芸能生活10周年記念アルバムを売り込むための宣伝行為にすぎなかったが、にもかかわらず、それは彼女にとってまだ一枚目のアルバムなのだった。


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2014年、彼女は遂に自分の力でブレイクし、「紅白歌合戦」でディズニー映画『アナと雪の女王(Frozen)』から挿入歌「生まれてはじめて(For the First Time in Forever)」を披露した。『アナと雪の女王』はもちろん日本でも大ヒットして、日本語版に声優兼歌手として出演した沙也加を真の認知へと導き、それは「紅白」におけるデュエットのパートナーを聖子ではなくてイディナ・メンゼルが務めることとなるほどだった。


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2017年、『ダンガンロンパ』の舞台化プロジェクト(沙也加は江ノ島盾子を演じた)で俳優・村田充と出会って13ヶ月後、沙也加は彼とスター勢揃いの結婚披露宴を東京で催したが、日本のメディアはシャットアウトされた。奇妙なことに、彼女は婚約発表の際も、ハワイでのハネムーンにおいても、父親に付き添われていた。「結婚すると責任を感じます」と彼女は語った。「そしてこれまで知らなかった安心感があります」同じ月、彼女はそれまでの事務所を離れたが、二年後、二人は「円満離婚」、すなわち無条件のきれいさっぱりとした別離を実行したことを発表した。
彼女の最後のもっとも忘れがたい役どころは、おそらく「IDOLY PRIDE」のアニメとゲーム双方での長瀬麻奈役だろう。彼女はそのヴァーチャルライブに出るのに髪をキャラクターと同じ色に染めて臨む気合いの入れようだった。「収録の日を本当に楽しみにしていました」と彼女はコロナ禍から復帰して大喜びしている声優たち共通の興奮状態をあらわにしながら言った。「私は髪を紺色に染め、アクションやゼスチャーを研究しました。モニターをのぞき込んでいるクルーたちが歓声を上げ始めた時には『やった!』と思いました」

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2021年は「IDOLY PRIDE」のリリース、イライザ役担当のミュージカル「マイフェア・レディ」のリバイバル・ツアー、来たる「銀河鉄道999 THE MUSICAL」でのメーテル役受諾のアナウンスと、彼女にとって華々しい一年となるはずだった。しかしながら、彼女は札幌での「マイフェア・レディ」のマチネに姿を現わさず、連絡が取れなくなった。12月18日、日本のニュースは彼女が日本のホテルの「ロビーで倒れているのが見つかった」と伝えたが、間もなく海外メディアは彼女が「14階の屋外スペースに、20階か、それ以上の階から転落した」との詳報を流した。現在、警察は事故と自殺の両面で捜査を進めていると見られる。

Jonathan Clements
Dec 19, 2021