魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

「ヴァンパイア」ほか六篇

上級生を召し上がれ

屋上ならばいいかしら
 欲情してもいいかしら
 あなたのような花びらに
触れたがらない指はない
だからあなたも召し上がれ
 上級生を召し上がれ
 あなたのために花咲いた
少女のための美少女を

雲ひとつないスクリーン
 真っ昼間からラブシーン
 白馬の騎士にキスをして
白いお城が見えるから
高嶺の花を召し上がれ
 上級生を召し上がれ
 この日のために舞い降りた
天使のための熾天使

お願いだから逃げないで
 大事に抱いてあげるから
 あなたのような美少女に
恋い焦がれない美女はない
だから嫌いにならないで
 冷たいなんて言わないわ
 大理石でも抱いてやる
上級生の常識よ

上級生の私生活

クラスメイトと下校中
 恋のうわさに無我夢中
 そんなあなたを尾行中
心ひそかに懸想中
まことしやかにささやいた
 上級生の私生活
 こころひそかに驚いた
上級生の私生活
恋に恋するこの季節
 実名入りの私小説
 徹夜で書いた女子二名
亡くなったのはその未明
真犯人は風の精
 などと呼ばれる二年生
 一年生に大人気
その正体は吸血鬼
恋に恋する下級生
 魅せられたのはその美声
「さあ幸せになりましょう」
その接吻が致命傷
渦中の人は下校中
  ほうきに乗って飛行中
  そんなあなたを尾行中
心ひそかに懸想中
処女の処女作 未完結
 だから事件も未解決
 迷宮入りは史上初
魅せて あなたの私生活

心乱れたあかつきは

心乱れたあかつきは
 澄ました顔をするなかれ
 海のほとりを訪れて
耳を澄ましてほしいだけ
海の男がその昔
 海のむすめの歌を聴き
 それでおぼれて死んだとか
馬鹿な話がしたいだけ
だから心が乱れたら
 海のほとりを訪れて
 この歌声を聴きなさい
そして私におぼれるの
愛してるとか好きだとか
 馬鹿な話をしてあげる
 海のむすめは死のむすめ
じょうずに情死したいから

不死は不思議な夢でした

川のほとりの草むらで
 ひとり歌った子守歌
 ここで殺したこのむすめ
今しばらくは眠るよう
たとえ地獄に落ちようと
 不死はあまりに不幸せ
 白い詩集は遺書となり
やがて聖書となるでしょう
思いあまって引き裂いた
 衣服は 今もあたたかく
 甘い生き血をむさぼった
からだは 今も美しい
不死は不思議な夢でした
 薄目をあいたこのむすめ
 草のかげから現われる
人形よりも白い肌
君に捧げる子守歌
 不死は不思議な夢でした
 晴れて死体と化す日まで
今しばらくは眠るよう

校舎のうらに寝ころんで

校舎のうらに寝ころんで
 草のみどりをすり込んだ
 恋の傷あと キスのあと
雲ひとつない青空が
鏡のように映し出す
 わたしはとても美しい
 かじるりんごは毒りんご
とわの眠りへまっしぐら
寝すがた それは晴れすがた
 大の字ならば大丈夫
 校舎の窓を開け放ち
天使のように舞い降りた
君はわたしの王子さま
 吸血鬼より非常識
 キスでめざめる草むらは
愛の楽園 別世界

ヴァンパイア

封印を解かれたような
 その朝の蒼天でした
 生きのびた木々にはすべて
水滴がちりばめられて
それはあの嵐の夜が
 ちりばめた宝石でした
 封印を解かれたような
湖はさざなみでした

殺そうと心に決めて
 連れ込んだ草むらのかげ
 その肩を抱き寄せながら
首筋に口づけをする
湖のほとりに咲いた
 花よりも白いむすめ
 歓びに酔い痴れながら
噛みしめた髪の毛でした

それはこの避暑地に咲いた
 恋よりも白い詩情
 封印を解かれたような
蒼天と森と湖
草むらのかげには今も
 腐らないむすめのむくろ
 魅入られたミイラのように
髪の毛を噛みしめている