
PaleNeØとは?
「PaleNeØ」(「パレネオ」と読む)については、まだWikipediaに記事は上がってないんですかね?2023年結成の純日本産四人組ガールズバンドで、驚くべき演奏力を武器に、現在(2025年)わが国のロックシーンを席巻中、といったところでしょうか。本記事ではYouTube上の動画をもとに、主に歌詞について書きます。
「水槽にて(In a Water Tank)」の歌詞
上の動画には三つのナンバーが収録されておりますが、まず二曲目の「水槽にて(In a Water Tank)」の歌詞について、ちょこっとだけご紹介します。歌詞全文は上の動画のコメント欄やこちらなどでご確認ください。
ここは失望の底 暗い水槽の底
やり場のない不安は 水圧のせい
脈打つ心の音が 重みを増していく
残り何回の命と 数えるような
望郷の声…
(コーラス)
わずかだけれど強く
震えている 聞こえている
戻れはしない漂流
悲しみは錘だ
溶けてしまえ
これをGoogleの自動翻訳機能で英訳すると、こんな感じ。
This is the depths of despair - the bottom of a dark water tank.
My hopeless anxiety is due to the water pressure.
My heartbeat is losing its elasticity.
I'm counting numbers of the heartbeats left
Until my life ends.
My home is calling me…
(Chorus)
Faintly but clearly,
I can hear my heart trembling,
I can hear it beating.
Adrift with no place to return,
Sadness is the sinker that sinks me.
Sadness, dissolve into the water.
いかがです?美しいでしょう?できればこの歌詞全文を引用してお目にかけたいところですが、それはコピーライトに抵触するので、代わりに英訳だけ、もう少し載せておきます。
…This is the bottom of the water tank,
Surely the bottom of the water tank.
I'm in a corner of a cell
Where I can't even see a window anymore.
The sound of my beating heart is getting weaker and weaker.
Tell me how many more beats
Until my life ends.
(Chorus)
Faintly, so faintly
I can hear my heart trembling,
I can still hear it.
I regret leaving my sinking vision behind.
Now the sinker is my corpse itself.
「REM」の歌詞
ちなみに上のライブ動画は、実は三本立ての三本目となってゐる。下は一本目(これも三曲入り)。
下が二本目(これも三曲入り)。
たとえば上の一本目の動画から、二曲目の、「世界最後の日」を歌った「コスモ心中(Cosmic Suicide)」の歌詞。
目をくらます
まるでスパンコール
星くずがとてもきれいだった
両手いっぱいに集めて
この夜を飾り付けよう
ぼくら 同じクズだから!
How dazzling is this sparkle!
Looks just like sequins!
The stardust was so beautiful.
Let's gather the broken stars all in our hands,
And decorate this black night,
Because we're only the same dust!
この「ぼくら 同じクズだから!(Because we're only the same dust!)」というフレーズには、初めて聞いた時、かなり衝撃を受けました。
とにかくこの三本の動画は、面白い歌詞の宝庫で、書いていると切りがないところですが、あえてもう一つだけ。上の一本目の動画の一曲目の「REM」という曲ですが、このリードギターの音の、何奏法というのか知らんが、聴き入っているこちらの聴覚器官が、悶絶しそうなくらい、気持ちいい。しかもそれが単なるテクニックのひけらかしではなくて、歌全体の幻想的な世界観をしっかりと支えている点が、本当に面白い。
目覚めはいつも沈みゆく方舟
体の重さが心を飲み込む
目覚めはいつも息をする屍
体は置き去り 心たゆたう
(コーラス)
ああ めくるめく瞳の奥 ファンタジー
おお おお 縫い合わせた手足でスイミング
I always wake up
Feeling like a sinking ark.
Feeling the weight of my body
Swallow up all my hope.I always wake up
Feeling like a breathing corpse.
I leave my body behind
And let my mind drift.(Chorus)
Ah, fantasies dance deep within my dazzling eyes.
Oh, oh, swimming with my sewn-up limbs.
「Raison d'etre」の歌詞
上の動画でおわかりの通り、このPaleNeØの本領は、いわゆるメタル系サウンドにあると思われる。それだけに、今年三月に公開された下の新曲は、大方のファンの意表を突くものだったのではないでしょうか。
わたくし思うに、これは単に音楽的な間口が広いというようなものではなく、メンバーのイマジネーションのレンジの広さと深さとが、そのまま無造作に示されたもののごとくです。
極夜のような現実を駆け抜けて来た
当てもなく 理由もなく
気づけば随分遠くへ
終わりだと信じ込んでいた
君と見た境界線を越えて
雪解けに 華が咲く
思うより涙が眩しかった
I've been running through darkness
Like the polar night for many years,
Without any destination,
Without any reason,
Until now, when I've found myself
So far away from where I started.
I crossed the boundary line I saw with you,
Believing beyond it there would be nothing but the end.
Now the snow melts,
As the flowers bloom,
And the tears are more bright than I thought they could be.
これ以上に感動的な歌詞はない。特にこの「境界線(the boundary line)」などという平凡な日本語が、ここでは何と豊かな意味を帯びていることか。
さて、PaleNeØのかくも豊穣なるイメージの源泉はどこにあるのか。確かいつぞや見たインタビュー動画では「アニメ作品に霊感を仰いでいる」というようなことを、メンバーの一人が言っていたように記憶しますが、もはやマンガにもアニメにもすっかり興味を失った私としては、この美しいメロディと確かなリズムに裏打ちされたPaleNeØの幻想世界こそ、マンガやアニメでは到底得られない快楽を提供してくれるものと断言せざるを得ませんが、いかがでしょうか。
PaleNeØの弱点と心配な点
PaleNeØのバンドとしての弱点といえば、わざわざ指摘するまでもない。メンバーにドラマーがいない点ですね。PaleNeØのサウンドにおいて、パーカッションの占める役割は非常に大きい、それは誰の目にも(耳にも?)明らかなところです。何で専属のドラマーを引っ張り込まないのか、理解に苦しみます。
もう一つ、心配なのは、少し微妙な問題ですが――こういう天分に恵まれたアーティストほど、時として、寿命が短い傾向があるということです。この壮大なる幻想の世界が、ある日突然、蜃気楼のように消えてしまうことがあるのですね。このような現象については、すでにこちらの記事で書いたことがあり、たとえばその記事の中で触れた「RYTHEM」(「リズム」と読む)という女性デュオは、PaleNeØとはジャンルは全然違いますけれども、私自身、昔好きだったデュオで、現在は再結成されて、ふたたび活動中ということで、それはそれで結構なことなのですが、この「RYTHEM」の確か三枚目のアルバムを初めて聴いた時の、まったく思いも寄らぬ深い落胆というか、失望感は、いまだに忘れられません。どれもこれもありきたりなラブソングばかり。それまでこんこんと湧き出でていた霊感の泉が、一気に枯渇してしまった、そんな風に感じました。その三枚目のアルバムについてのアマゾンのレビュー欄に、ある方が「アレ(それまでの「RYTHEM」の作風)は結局少女時代の夢みたいなもので、大人になれば忘れるだけのものだったんですかねえ」などと書き込んでおられたのを思い出します。願わくは、わがPaleNeØの諸君には、大きく成長しながらも、決してつまらない大人になることなく、良い意味でのガキのままで通されることを希望します。