魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

「人形泥棒」他二篇(一部押韻)

フランスの歌手ミレーヌ・ファルメールのアルバム『縫合 - Point de Suture』(2008年)のジャケット。日本の人形作家・三浦悦子氏の作品が使われている。amazon.co.jpより。

人形泥棒

女子大生は医師志望
 残念ながらもう死亡
 ご覧の通り失血死
刺した女はこのわたし
駆けつけたのは警官だ
 寄ってたかって折檻だ
 何と愉快な人生だ
全部お金が無いせいだ
金があったら抱いていた
 金がないから刺していた
 どうせわたしは貧乏だ
だから人形泥棒だ

彼女が欲しいこのわたし
 美少女店で美女探し
 接客業は営業だ
人気嬢ほど人形だ
つれない君は太陽
 釣れるお前は食用だ
 飴で釣ったら鞭で打ち
値札をつけて奴隷堕ち
何が人身売買だ
 むしろ人形売買だ
 どうせわたしは貧乏だ
だから人形泥棒だ

大金持ちのお父さん
 有閑ママのお母さん
 一人娘のこのわたし
暇さえあれば人殺し
肚をくくったお父さん
 首をくくったお母さん
 当てにしていたその遺産
当てが外れて自己破産
和姦した子は十二人
 屍姦した子は二十人
 どうせわたしは貧乏だ
だから人形泥棒だ

足を洗った人殺し
 足を使って職探し
 面接官はあら探し
魅せてあげたいこの素足
だから会いたい 人形師
 作ってほしい わが天使
 今すぐ欲しい わが未来
なのに料金前払い
人間愛は共鳴だ
 人形愛は運命だ
 人間よりも人形だ
今日も人形泥棒だ

透明人形

鏡よ鏡よ鏡さん
 どうして映してくれないの
わたしを映してくれないの
とびらに鍵をかけた部屋
 固く閉ざしたこの部屋に
恋人たちが眠ってる
 恋人たちは愛し合う
わたしはかげで見てるだけ
鍵穴からは丸見えの
 秘密だらけの花畑
 もっと離れて 花と花
蜜蜂たちに見つかるよ
恋人たちは切り結ぷ
 するとわたしはひび割れる
指を切ったら指にひび
 首を切ったら首にひび
切れば切るほど亀裂が入る
恋人たちは結ばれる
 そしてわたしはこわれて消える
鏡がわたしを探してる
 わたしのすがたを探してる
淫らなむすめの乱れたすがた
人に見られて恥ずかしく
 みずから見るもおぞましく
 見れば見るほど見られたく
見られないではいられない
鏡よ鏡よ鏡さん
 未来を見せてくださいな
未来を見せてくださいな

未来

未来を見てはいけないわ
未来を見てはいけないわ
見せびらかした花びらに
指を触れてはいけないわ

時空を超えた愛よりも
むしろうしろの城に来て
とびらのかげに隠れるの
きれいなものが見られるわ

そして未来も見られるわ
夢も希望も見られるわ
見せびらかした花びらは
将来よりもきれいだわ