表題の作品につきまして、一天一笑さんから内容紹介をいただきましたので掲載します。一天一笑さん、いつもありがとうございます。
映画『大河への道』を鑑賞して。
この映画は、令和の地域振興策に悩む千葉県香取市と、プレ幕末ともいえる江戸時代後期の天保年間(第十一代将軍・徳川家斉の時代)とを行ったり来たりしながら、“大日本沿海輿地全図”を完成させた伊能忠敬と伊能隊とに焦点を当てて、時にはユーモラスに、時にはサスペンスタッチで、物語が進行して行きます。
だが映画の冒頭、伊能忠敬本人は病死(享年七十三歳)してしまい、残された伊能隊は途方に暮れます。地図は未完成なのだが、伊能忠敬の死去が公儀に明らかになれば、伊能隊の解散はまず間違いないだろう。ただでさえ、莫大な費用を必要とする日本地図作成は勘定奉行から睨まれているのに・・・。肚を括った伊能隊のリーダー(平田満)は、弔問に来た幕府天文方・高橋景保(中井貴一)を巻き込んで、幕府には依然として伊能忠敬生存を報告します。因みに高橋景保の実父・高橋至時と伊能忠敬とは師弟の関係でした。伊能忠敬は年下の学友に交じって測量術や天文学を学んだのです。非常に呑み込みの良い生徒だったようです。
高橋景保は、自らを“若先生”と呼ぶ伊能隊のリーダーと相談して、万が一、幕府に露見した場合には、自分は何も知らなかった、自分も騙されていたとの態度を取ることにした。
日本地図を完成させるまでは、伊能隊と一蓮托生だと肚を括る。露見すれば、幕府を騙して金品をせしめた重罪人として、打ち首はほぼ免れないのだが。
令和の時代では、香取市総務課主任・池本保治(中井貴一による二役)が香取市の観光振興策の会議の席上、殆ど苦し紛れに“ちゅうけいさん”こと伊能忠敬の人生を大河ドラマしたらどうかと提案する。結果、大河ドラマ作成の企画書を作成する破目になり、県知事指名(?)の脚本家(橋爪功)に依頼に行くが、何でもここ二十年来執筆していないとのことで、前途多難である(それで地方都市とはいえ、一戸建ての固定資産税と庭の剪定代とを含めた維持費が賄えるのか?)。
ともかく脚本家と、池本保治と、まったく空気を読まない部下(松山ケンイチ)との三人は、企画書を仕上げるべく、フイールドワークに精を出す。池本は推歩の術を試み、足が攣る経験もする。しかし、大変な事実が発覚した。伊能忠敬は、日本地図を完成させていない。完成の三年前に病没している。これでは脚本が書けないという。
一方、江戸時代後期の幕府は、一向に姿を現さない伊能忠敬に不審を抱き、スパイ(西村まさ彦)を放つ。何せ地図作成の進捗状況の報告は、天文方の高橋景保に任せっきりなのだ。当然、伊能忠敬のニセモノを立てるのだが、ほぼ伊能隊以外の誰にも会えない毎日に嫌気がさして、何処へともなく遁走してしまう。
同じころ、情報収集していたスパイは、これはというネタを手に入れる。そして、伊能忠敬の墓所を暴こうとする・・・。
日本地図完成が先か、伊能忠敬の病死が露見するのが先かの競争になります。
苦闘の末、絶妙なタイミングで、日本地図は完成するのですが、老中を始め重臣が居並ぶ中、完成した日本地図を見た将軍・徳川家斉(草刈正雄)に「伊能忠敬はどこにいる」と問われた高橋景保は、何と答えるでしょう?
令和の池本保治の企画書は、地域振興策として採用されるのでしょうか?
地球を俯瞰する技術の無い時代に、現在の日本地図との誤差が5%以内の地図を作り上げた伊能隊。落語家・立川志の輔原作の映画をお楽しみください。
一天一笑