
わたしを刺して
心ないわたしを刺して
心ないわたしを刺して殺して
この胸をひと突きにして
おびただしい返り血を浴びて殺して
湖のほとりで刺して
美しい湖を血の海にして
わたしの散りぎわを見て
おびただしい花びらを浴びて殺して
こと切れたわたしを抱いて
亡きがらを泣きながら抱きしめていて
くりかえし わたしを呼んで
くりかえし くりかえし あざむいたわたしを
洪水の森
今日もまた 店をひらいていた女子が 店をたたんだ
天分の乏しい女子は だまされた果てに身ごもり
天分の豊かな女子は だまされてみずから身売り
ぼろもうけした天使ほど 生活は荒れてすさんだ
この森は 色とりどりの鳥が住み 狩りが盛んだ
若者は 寝ても覚めても 耳もとに鳥のさえずり
馬鹿者は 天使の羽根に魅せられて 悪魔と契り
わたくしは 少女の肉を食いすぎて ツケがかさんだ
悲しみの波がすべてを飲み込んで 視界から消す
脳髄を襲う洪水 明けぬ夜はあまりに長く
引いてゆく水の中から現れる 聖なる遺跡
歴史家は記憶の外科医 指先に最強のメス
あけぼのの接吻を待つ傷口は あまりに深く
血の海に浮かぶ人魚の性器こそ まさに宝石