いろんな人がカバーしているが、この歌だけは、どうしても書いた本人が歌わないと駄目らしい。とにかく歌詞がとりとめなさすぎて、カバーしている歌い手さんたちは、相当の実力ある人たちでさえ、みんな「はずしている」という印象を受ける。
これは一般に解釈されているように、有閑階級の悦楽を歌った歌ではさらさらなくて、本当はとてもつらい歌なのである。
この歌の急所は次の行にある。
長い長い坂道を
いま登ってゆく…
たとえば、突然職を失った人が、借金を重ねる一方の生活をしばらく続けたのち、ようやく定職にありついて、長年にわたる返済の計画を立て始める。
あるいは何か重い中毒症状を伴う病気、それは薬物依存でも、ギャンブル依存でも何でもよろしいが、そうしたものからやっと回復しかけた人が、つらい禁断症状と戦いながら、何とか更生の一歩を踏み出そうとする。
そうした人たちが、苦しい過去を断ち切った反面、ふと前を見ると、それまで漠然と思い描いていた夢や希望がすっかり消えて、もはや空白の時間以外に何も残されていない。「白いページの中に」とは、そうした虚脱感を表現した言葉ではないか。そんな気がする。