魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

小杉健治『最期』

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表題の作品につきまして、一天一笑さんから紹介記事をいただきましたので掲載します。一天一笑さん、いつもありがとうございます。


小杉健治『最期』(集英社文庫)を読了して。
小杉健治が裁判員裁判を題材にして、鶴見弁護士の活躍を描く意欲作です(金銭的には持ち出しでも弁護活動をする)。

著者紹介

先ずは著者小杉健治の紹介をしましょう。
1983年に『原島弁護士の処置』で小説家デビューを果たし、その後も社会推理小説と時代小説を両立させながら、精力的に執筆活動をおこなっております。その作品は2時間テレビドラマとしても放送されています。
私としては、寺脇康文主演の検事沢木正夫シリーズや、亡き坂口良子主演の当番弁護士シリーズ等が印象深いです。

法廷にて

77歳の被告・岩田貞夫は、身分詐称をしているのではないのか?
仲間(?)のホ-ムレス馬淵を撲殺したとして裁判にかけられている被告・岩田貞夫を、裁判員に選ばれた貝原茂樹が、四日市公害訴訟を勝利に導いた船尾哲三ではないかと疑問を持つところから、この小説は走り出します。中学生だった貝原にとっては、忘れられない恩人です。
教職をなげうって迄、大企業を相手に、絶対無理だと誰もが思った訴訟を勝ち抜き、四日市に青い空を取り戻してくれた人でした。その恩人と40年程経過してのまさかの再会です。
しかし、岩田は自分が船尾であることを、かたくななまでに認めようとはしません。そこに何があるのでしょうか?

過去への旅

定年を過ぎて、妻も病死の境遇にある貝原は、30代の鶴見弁護士と協力して調査に当たります。
船尾は40年程前、どうしてひっそりと誰にも告げずに四日市を後にして、放浪とも言える日雇い仕事の人生を送る事になったのか?
目撃証言の不自然さは何処からくるのか?
何故してもいない殺人を認めたのか?
何故岩田貞夫と名乗る事になったのか?
人生の折り返し地点を過ぎた貝原は、自分自身の人生と重ねあわせながら、四日市公害訴訟、或いは自分以上に公害からくる喘息に苦しめられた人々の運命を思い出します。77歳になる被告は無罪を勝ち取り、もう一度船尾としての人生を踏み出せるのか?鶴見弁護士の腕前の程は?

裁判員制度四日市公害裁判に興味のある方、清々しい読後感を求める方にお薦めします。
天一

最期 (集英社文庫)

最期 (集英社文庫)