魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

抒情詩「腐った心臓」(一部押韻)

レオナルド・ダ・ヴィンチによるヒトの心臓のデッサン。ウィキメディア・コモンズより。

根性のないこのわたし
 何をやっても続かない
 なのにときどき言われるの
「いい根性をしている」と
辛抱しても続かない
 貧乏しても続かない
 泥棒しても続かない
絶望しても続かない

男の人と続かない
 女の子とも続かない
 なのにときどき言われるの
「いい根性をしている」と
「あの子 彼女をふっていた
 いい根性をしている」と
「あの子 彼氏をぶっていた
 いい根性をしている」と

何でわかってもらえない
 そもそも意味がわからない
 いいも悪いもあり得ない
根性なんか無いわたし
決心しても続かない
 突進しても続かない
 刷新しても続かない
失神しても続かない

宝石店は魅せる店
 宝石だらけ KISSだらけ
 夜空の星のまたたきは
わが耳もとにささやいた
「あなた エデンに咲いていた
 いい根性をしている」と
「あなた 地獄で売れていた
 いい根性をしている」と

指切りしても続かない 
 首吊りしても続かない
 なのにときどき言われるの
「いい根性をしている」と
安値で買ったこのからだ
 高値で売ってもうかった
 売れば売るほどもうかる仕掛け
死んで腐ってくたびれもうけ

美に値打ちなど何もない
 かねに価値など何もない
 価値があるのはこのいのち
なのに毎日何もない
どんよりとしたこの日ざし
 生きがいのないこの暮らし
 いつまで続く 下り坂
いつまで流す この涙

何が「腐った根性」だ
 どの根性が腐るのだ
 何でわかってもらえない
無い根性は腐らない
研ぎ澄まされたこの凶器
 殺せば治るこの病気
 なのに狂ったこの手もと
ほとばしり出るこの血潮

真っ赤に錆びたこの凶器
 刺した臓器は虫の息
 この心臓は傷だらけ
もはや死にかけ 腐りかけ
根性のない心臓は 
 ドキドキしても続かない
 そのうち急に止まるだけ
だけど死なない 腐るだけ

腐りかかったこの臓器
 くすぶっているこの熱気
 わが身は灰になろうとも
この心臓は燃えないの
宝石たちは言うでしょう
「いい心臓をしている」と
 火葬できないこの宝
これぞ火事場の馬鹿力