魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

BAND-MAIDの「Rock in me」

BAND-MAIDとThe Warning。BAND-MAIDの公式Twitterより。

「聴く」という体験

先日Yahoo!ニュースのBAND-MAIDに関する記事を読んでいて、目に留まったコメントがあります。いわく「このBAND-MAIDという奴も所詮スキマ産業だろう。何もロックに志があるわけではなく、Perfumeがテクノで、BABYMETALがメタルで当てたのにならって、市場の虚を衝く形でハードロックに手を出しているに過ぎない」と。
こういうコメントを書く人の気持ちが、私にはよくわかる。「メイド服をまとい、“世界征服”を目標に掲げる女性5人組ロックバンド」などとあるのを見れば、「へー、面白そう」と思うよりも「くっだらねー」と感じる方がむしろ常識的な反応でしょう。ところがライブでもCDでもYouTubeでも配信サービスでも何でもいい、とにかく一度でも彼女たちの「」を聴いてみれば、「違う!!コイツら本物だ!!」と気がついて愕然とするのです。あのチャラチャラしたステージ衣装を無理矢理ひんむいてみれば、中から現れるのは古き良き時代のハードロックの伝統を受け継ぐまっとうな音の職人さんたちの姿なのであって、純然たるパフォーマーであるところのPerfumeやBABYMETALとはとても同列に論じられるものではありません(別にPerfumeやBABYMETALがつまらないと言うのではない)。「聴く」という体験は、他のあらゆる体験と同様、人生を変える力を秘めている。要するに何事も経験、食わず嫌いはもったいないよという話です。

The Warning の「CHOKE」

The Warningというメキシコの三人組ガールズバンド。今ここでこれに触れるのは、どうもアメリカ人の頭の中ではこのThe WarningとBAND-MAIDとがセットになっているフシがあるからです。私見ではこの二つのバンド、ぜんぜん志向性の異なるバンドですが、ただこのThe Warningというのも凄いバンドです。前の記事で「The Dragon Cries」という曲の話をしましたが、あの曲はBAND-MAIDよりもこのThe Warningにってもらった方がよかったのではないでしょうか。
BAND-MAIDとThe Warningとは昨年(2022年)10月、カリフォルニアで開催されたAFTERSHOCK FESTIVALで顔を合わせて、一緒に写真を撮るなどした。とはいえお互いにどの程度まで相手のことを認識しているのかわからないが、少なくともThe WarningのドラマーはBAND-MAIDのことを知っていて、BAND-MAIDのドラマーを高く評価しているという。
このThe Warning、日本での知名度は限りなくゼロに近いが、それは楽曲がほとんど配信だけで流通していて、物理メディアは入手困難だからだそうです。まあ日本では気になるアーティストはとりあえずCDを買って聴くという人が(私もそうですが)まだまだ多いのでしょうね。その他詳細に関しては、別のブログで熱心に紹介されている方がいるので、そちらにお任せするとして、とにかくこのThe Warning、食わず嫌いはもったいないので、チェックしてみられることをお薦めします。YouTubeにたくさん動画が上がっています。ちなみに下の「CHOKE」という曲は、聴く者の血が凍り付くような内容の歌詞の曲です。近ごろ日本ではおぞましい「自殺幇助事件」が後を絶ちませんが、そんな光景を連想させます。


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立志伝中の人

BAND-MAIDの2023年のツアーはまだ始まったばかりですが、先日(3月23日)の熊本公演のセットリストを見て驚きました。1曲目の「サヨナキドリ」から3曲目の「Rock in me」までは小鳩ミクが歌う曲ですね。4曲目の「from now on」はインストゥルメンタルだから、メインヴォーカルの女の子は5曲目の「Domination」までステージ上に姿を現さなかったと見える。
上にBAND-MAIDの本質は音の職人さんたちだと書きましたが、この小鳩ミクだけは異色の存在ですね。BAND-MAIDの結成秘話というようなものは、もう方々で書かれたり語られたりしているので、なるべく端折はしょりたいところですが、BAND-MAIDはまず小鳩ミクのヴォーカルでスタートした。それがバンドの音と彼女の声が合わないということで、新しいヴォーカリストを迎えることにした。
ここが多くの人が指摘するBAND-MAIDの謎の一つです。そもそも小鳩ミクが作ったバンドなのだから、自分の声とバンドの音が合わないのなら、極端な話、メンバーを全員クビにして、自分の声に合う音を出すメンバーを新たに集めるという選択肢もあったはずです。だが彼女はそうしなかった。メンバーがよほど気に入っていたと見える。もしメンバーの後年の大化けぶりを見越していたのなら、彼女には大変な先見の明があったことになります。
そうして新しいヴォーカリスト(驚くべき逸材)がやってきた。ところがこの新入りはメイド服をまとうことを断固拒否した。これも有名な話なので、これ以上は書きません。
とにかくこの小鳩ミクという人は立志伝中の人ですね。もっともBAND-MAIDはまだ「進化」の途中なのだから、彼女の立志伝もまだ完結していないわけですが。わが国の少年少女がこのような人に憧れて後に続いてくれれば、日本の音楽シーンも少しは面白くなるかも知れませんね。
下は「Rock in me」のドラムカバー。


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