BAND-MAIDは「ピュア・ロック」
あるアメリカのユーチューバーの方(だったと思う)によれば、BAND-MAIDの音楽はヘヴィメタルではなく、ハードロックですらなく、強いて言うなら「ピュア・ロック(Pure Rock)」とでも呼ぶべきものなのだそうです。この用語を定義するのは難しいでしょうが、BAND-MAIDの音楽が好きな人なら「あー、そうかもな」と納得する部分はあるでしょう。
で、またこの曲の話ですが…
このインスト曲「from now on」こそ、彼女たちのピュアなロック魂がダイレクトに伝わってくる名曲であると言えよう。このテンションはどう考えても異常であり、これを聞き直すたびに、私は彼女たちが今まさに「Unseen World」を――「未だ見ぬ世」を――「前人未到の境地」を突っ走っていることを思って戦慄を禁じ得ない。
そうしてこのサウンドが、先日(日本時間2023年2月11日13時)ロサンゼルスにおいて、ふたたび炸裂したのであった。
屈辱の「前座」出演
「また前座かよ」とは言うまい。どうせ女だからな。だがそうした封建的な身分制度は、今や根本から揺らぎかけていることは認識しておいた方がいい。乱世の風はすでに日本を訪れている。
それにしても当日の映像を見ると、ステージ中央に何か巨大な階段がしつらえてあって、そのてっぺんに「YOSHIKI」と書いたピアノとドラムセットが乗っており、BAND-MAIDはその階段下の狭い空間に横一列に並んで懸命に演奏している。しかも(今度の「前座」出演はニューヨークで二回、ロサンゼルスで一回、計三回あったのですが)一回目はわずか4曲15分。二回目と三回目とは5曲20分。昨年11月のガンズ・アンド・ローゼズの前座の時は堂々7曲30分のセットリストだったのに。今の日本を代表するロックバンドの一つに対してこの扱いは何なのかと、憤りに近い感情を抱いたのは私だけではあるまい。
もっとも、演奏自体はどれも皆よかった。特に目立ったのが先日誕生日を迎えられたというメインヴォーカルの女の子の張り切りようで、もはやビースト級の迫力でした。嘘だと思う方はファンカムをチェックしてみられるとよろしい。YouTubeにたくさん上がっていますから。
ただ私がこれらのファンカムの一つを見ていて本当に暗澹とした気分になったのは、ニューヨークでの二日目の映像です。この日はステージの真っ最中、リズムギター兼セカンドヴォーカルの女の子のギターアンプが故障して音が出なくなり、スタッフが二、三人ステージに上がってアンプをいじり始め、彼女は結局ギターを置いて、歌に専念することを強いられた。もちろんメンバーは終始笑顔を絶やさず、リードギターの女の子がリズムギターの女の子を直接励ますシーンもあったりして、お客さんも大喜びで、ステージ自体は無事(?)終了したのですが、このトラブルが仮に真打ちのステージで起こっていたとしたら、笑いごとでは済まなかったはずだと自分一人で勝手に憤慨していたところ、最後のロサンゼルス公演では、この真打ちの何とかいうバンド(よくは知らないし、興味もないので、よう書かん)のステージにおいても設備故障が発生し、開演時間が大幅に遅れたそうで、お粗末さでは同レベルだったようです。ちなみにこちらは音響関係ではなく、照明関係のトラブルで、この何とかいうバンドのステージはレーザー光線等を駆使した華麗なもので、アメリカ人の観客からも「面白かった」と好評だったようですが、BAND-MAIDのように熱狂的なファンを獲得できるかどうかはわからない。