魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

ルネ・ヴィヴィアン(Renée Vivien)「友への言葉(Paroles à l’Amie)」

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シメオン・ソロモン「ミティリーニの庭園でのサッフォーとエリンナ」。ウィキメディア・コモンズより。

あなたは知っているわね わたくしは並の人間
よくもなく いけなくもなく おとなしく 少し陰気で
香水の重い香りや 大声が大の苦手で
金色や紅色よりも 灰色をよろこぶ女

わたくしは夕陽が好きよ ゆっくりと沈みゆく陽が
暖炉の火 それは隠れて住む者の優しい味方
透きとおる琥珀の色に覆われたランプの光
ブロンズを赤く染めたり 陶磁器を青く染めたり

砂よりもさらさらとした絨毯の上を見つめて
怠惰にも思い浮かべる 金色のえんどう豆の
川岸を*1 楽しい日々の輝きは 今なお流れ…
わたくしは 今は鎖につながれた罪びとのよう

わたくしはもうこんな年 処女ならば こころ弱くも
怖いのを我慢しながら 男性に身をまかす年
わたくしは 誰もが選ぶ道連れを 選ばなかった
あの道の角を曲がって あなたがやってきたから…

ヒヤシンス 踏みにじられて血を流す落日の丘*2
物思う愛しき君のかたわらを エロスは歩む…
わたくしは女に過ぎず 美を愛でる権利などない
男性の愚劣に耐えて生きるのが 女のさだめ

欲しいのは 風の白さで出来ている 姉妹の愛や
羊歯の葉に傷をつけないひそやかな歩みの足や
夕闇に溶け入るような低い声 甘いささやき…
わたくしは 度し難いほど貪欲で 無恥だとされた

その目を見 その髪の毛に触れるのを 禁じられたの
なぜならば あなたの髪は丈長く 芳香に満ち
そしてそのひとみはいつも常ならぬあこがれに燃え
世間への反抗心に波を打ち ゆれているから

わたくしの目が探すのはあなたの目 ただそれだけで
人々は怒り心頭 わたくしに指をさすのよ
すれちがう男女のうちの誰ひとり 信じなかった
わたくしが 迷うことなく あなたを選んだことを

わたくしが破った掟 遵守する値打ちはあるの
この愛を どうぞ裁いて 健全なこの感情を
愛し合う男女を結ぶ感情と何ら変わらぬ
単純で 必然的で 運命にひとしい愛を

運命の手にみちびかれ ひたむきに歩む女が
澄んだ目をしていることに気づかない人々は言う
「罪深い恋の炎に 内面を食い荒らされた
この女 その呪われた正体は魔性か」などと*3

妄想は 低いモラルの持ち主に任せておこう
わたくしは あなたとともに あけぼのへ思いを馳せる
心ある友だち同士 安らかに営む暮らし
訪れる優しい日々や 甘美なる夜また夜へ

満天の星の光を 山上に仰ぎ見ましょう
男性がどんな裁きを下そうと 構いはしない
純粋な女と女 愛という固い絆で
結ばれているのであれば 怖いものなど何もないわ…


*『手を取り合った優しい時間』('À l'heure des mains jointes' 1906)より。

*1:「金色のえんどう豆の川岸」サッフォーのある断章への言及。

*2:「ヒヤシンスが血を流す丘」サッフォーの名高い断章への言及。

*3:「罪深い…呪われた女」ボードレールの「地獄落ちを宣告された女たち」への言及。
以上の注はGillian Spraggsさんの英訳に附されていたものです。