魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

「みにくい花」ほか五篇

みにくい花

And laugh - but smile no more.

かたくていじらしかった
あの日のつぼみのほほえみはなく
今はただみにくい花が
花びらを見せびらかして大笑いしている
あの日のほほえみはなく
あの日の可憐なかたさもなくて
今はただ咲いてしまった
みにくいばらの花の正体を見る

村のむすめ

ときどき
 胸をどきどきさせてくれる
ときどき口説きたくなる
 きれいなからだ
ではないかも知れない
 けれど きれいなむすめ

ひそかに目をつけている
 けれどまだ手をつけてはいない うぶなむすめ
さかりがついて
わるい虫までついてしまった
 かも知れない けれど可愛い
可愛いお前

きれいなからだではない
 かも知れない けれどきれいな
きれいなからだ
ときどき
 胸をどきどきさせてくれる
熟れて 売れてしまった うるわしの村のむすめ

人形

そのかみの淑女のような
美しい人形に胸焦がす日々
淫らな夢にうなされ
蒼ざめた寝室で目をさまします

人形に胸焦がす日々
淫らな夢また夢にうなされ
蒼ざめて目をさますとき
首筋の傷あとはKISSのあとです

人形の家

「私を飾って下さい」―谷口淑子「シクラメン


生まれたままの姿で飾られていた
生まれたままの姿で
花のように活けられていた
それは雪のように白い
雪よりも白いかも知れない
年ごろのむすめのむくろ
生まれたままの姿で
たわむれに手折られ
いけにえとして
花のように活けられていた
さざんかもさくらもばらもない部屋の
鏡のかげに飾られていた
花もないさびしい部屋に咲いていた
花もはじらうむすめのむくろ
花びらを見せびらかして咲いていた
鏡のように輝いていた
咲いてしまった
いけないいけにえが活けられていた

未来

未来を見てはいけないわ
未来を見てはいけないわ
見せびらかした花びらに
指を触れてはいけないわ

時空を超えた愛よりも
むしろうしろの城に来て
とびらのかげに隠れるの
きれいなものが見られるわ

そして未来が見られるわ
夢も希望も見られるわ
見せびらかした花びらは
将来よりもきれいだわ

ピアノのひびき

お静かに 何が聴こえる
お静かに 何があなたの磨かれた耳に触れる
それは見えない風が呼ぶ時
それは見えない夜風が呼びかける時
お静かに 何が聴こえる
お静かに 何があなたの磨かれた耳に触れて
揺れなければならないものが揺れる
揺れなければならないあるゆかしいゆかりが揺れる

お静かに 何が聴こえる
お静かに 何があなたの耳もとの道を歩く
それは夜風が呼びかける時
それは夜風がひびきをひるがえす時
お静かに それは聴こえる
お静かに それはひだりの耳もとの道を歩く
冷やかなピアノの音だろうか
冷やかに耳を訪れるあのピアノのひびきだろうか

お静かに 風が聴こえる
お静かに 風がふたたび冬の日の笛を鳴らす
それはひびきがひるがえる時
それはあの日のひびきがひるがえる時
それはあの日の姫のピアノの
姫のピアノのひびきがひるがえる時
お静かに 風が聴こえる
お静かに 風がふたたび冬の日の笛を鳴らす

冬の日の夜空にひそむひびき
夜空に住むひとつのひびき
冷やかなピアノの音だろうか
冷やかに耳を訪れるあのピアノのひびきだろうか
お静かに それは聴こえる
お静かに それはみずから磨かれた耳に触れて
揺れなければならないものが揺れる
揺れなければならないあるゆかしいゆかりが揺れる