魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

(日本語訳)ボードレール「あるイカロスの嘆き(Les Plaintes d'un Icare)」

ハンス・ボル「イカロスの墜落のある風景」ウィキメディア・コモンズより。

少女らの性を買う男性たちは
健康で ハッピーで 満ち足りている
僕はといえば 腕を折ってしまった
なぜなら 僕は雲を抱きしめたから

大空の奥深く ぴかりと光る
すばらしい星たちのおかげさまで
つぶれた僕の目に映じるものは
数々の太陽の思い出だけだ

空間を旅しても 得るところなく
中心も限界も見当たらなくて
わからない眼球が燃えているだけ
その熱で 両翼がばらばらになる

美を愛するがゆえに 火だるまとなり
堕ちてゆく奈落こそ 僕の死に場所
その場所に ご自分の名が付くという
最高の栄誉など 知る由もなく


*『悪の華』第三版103。原文はこちら