最高の英知の天使 絶世の美貌の天使
宿命のままに逐われて 声望を失った神
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
流刑に処された王子 不当なる扱いを受け
倒れても 旧に倍する勢力で立ち上がる君
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
一切を知っている君 冥界の偉大なる王
苦悩する者に寄り添い これをよく癒す治療者
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
癩病の患者たちにも 人外の賤民らにも
恋により 天上界のよろこびを教える君よ
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
年老いてなお逞しき情婦たる「死」が君により
孕むのは 人が「希望」と呼ぶ女子だ 狂気の美女だ
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
ギロチンを囲むすべての人々を見下している
囚人に 肝の据わった眼光を与える君よ
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
けちくさい神が隠した貴金属 それが大地の
広がりのどの一角に存するか 君は見破る
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
大量の金銀銅が埋められてまどろんでいる
地下深き宝庫の場所を 君はその炯眼に知る
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
建物の端を 眠りに落ちたまま さまよう人が
下を見て眩まぬように 広い手で目隠しをする
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
夜の帰路 馬車に轢かれた酔漢の老いた背骨を
へし折らず 魔力によってしなやかに曲げるのは君
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
「金持ち」の額の上に 下劣なるその品性と
悪徳の烙印を捺す 腹黒い共犯の君
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
少女らの目にも胸にも 聖者らが負った傷への
崇拝と まとう襤褸への愛着を植えつける君
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
流人らを支える杖よ 発明家たちのランプよ
吊るされる者と一味の告白に耳澄ます者
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
天上の父なる神が 真っ黒な怒りに駆られ
地上なるパラダイスから追い出した者の養父よ
堕天使よ 俺の久しい窮状を憐れんでくれ
祈祷
堕天使よ 君に讃辞と栄光の絶え間無くあれ
そのかみは 君が治めた天国で そうして今は
敗残の君が静かに夢を見る地獄の底で
いつの日かそのかたわらに 俺もまた眠りたいのだ
横たわる君の額に萌え出でた「知恵」の大樹が
新たなる「寺院」のごとく 鬱蒼と茂る季節に