魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

ルネ・ヴィヴィアン(Renée Vivien)「タッチ(Le Toucher)」

Le Toucher(原詩)

Les arbres ont gardé du soleil dans leurs branches.
Voilé comme une femme, évoquant l’Autrefois,
Le crépuscule passe en pleurant… Et mes doigts
Suivent en frémissant la ligne de tes hanches.

樹木らはその枝で太陽の守りをしている
たそがれは女のように 薄暗いヴェールに隠れ
追憶に涙して行き過ぎる そうして指が
ふるえつつ なぞるのは 大好きなお尻のかたち

Mes doigts laborieux s’attardent aux frissons
De ta chair sous la robe aux douceurs de pétale…
L’art du toucher, complexe et curieux, égale
Les rêves des parfums, le miracle des sons.

絶妙の指づかい 花びらのようにひらいた
ドレスの下で この肉のわななきのうちにいざよう…
複雑で面白いこのアート タッチのアート
創る美は 音の奇跡や 芳香の夢に負けない

Je suis avec lenteur le contour de tes hanches,
Tes épaules, ton col, tes seins inapaisés.
Mon désir délicat se refuse aux baisers ;
Il effleure et se pâme en des voluptés blanches.

ゆっくりとなぞるのは 大好きなお尻のかたち
その肩や その首や その騒ぐ胸の輪郭
繊細な欲情は 接吻を遠慮しながら
すれすれの真っ白なよろこびに気も遠くなる

(『呼びさまし(Evocations)』1903年

The Touch(Margaret Porterによる英訳)*1

The trees have kept some lingering sun in their branches,
Veiled like a woman, evoking another time,
The twilight passes, weeping. My fingers climb,
Trembling, provocative, the line of your haunches.

樹木らはその枝に太陽の名残りをとどめ
たそがれは女のように ヴェールで顔を隠して昔をしのび
泣きながら通り過ぎる 私の指は挑発的に
ふるえながら あなたのお尻の線をよじのぼる

My ingenious fingers wait when they have found
The petal flesh beneath the robe they part.
How curious, complex, the touch, this subtle art--
As the dream of fragrance, the miracle of sound.

私の器用な指先は 開いたドレスの下の
肉の花びらを見つけたところで 待機している
このタッチ この繊細な技巧の 複雑で面白いこと―
芳香の夢のよう 音響の奇跡のようだ

I follow slowly the graceful contours of your hips,
The curves of your shoulders, your neck, your upappeased breasts.
In your white voluptuousness my desire rests,
Swooning, refusing itself the kisses of your lips.

私はゆっくりとあなたのお尻の美しい輪郭をなぞり
その肩や その首や そのどきどきしている胸のカーブをたどる
あなたの白いからだの中で 私の欲望は 気が遠くなりながらも
満足し あなたの唇に愛されるのを辞退する

Touching(Catharine Krogerによる英訳)*2

The trees have kept the sun in their branches,
Veiled like a woman, evoking the past,
The dusk goes by weeping… And my fingers,
Follow, quivering, the line of your thighs.

樹木らはその枝に太陽の名残りをとどめ
たそがれは女のように ヴェールで顔を隠して昔をしのび
泣きながら通り過ぎる…そうして私の指は
ふるえながら あなたの太ももの線をなぞる

My clever fingers linger with the shudder
Of your flesh under your soft petaled gown…
The art of touching, complex and curious, equal
To the dream of perfumes, the miracle of sound.

私の器用な指先は 柔らかい花弁のついた
あなたのガウンの下で 肉のわななきの時間を引き延ばしている…
タッチの技術 複雑で面白い技術は
芳香の夢や 音響の奇跡に匹敵する

I follow slowly the contours of your thighs,
Your shoulders, your neck, your upappeased breasts.
My delicate desire holds back from kisses:
It graze and swoon in white voluptuousness.

私はゆっくりと あなたの太ももや
その肩や その首や そのどきどきしている胸の輪郭をなぞる
私の繊細な欲情は接吻を差し控える
それはただかすめるだけで 白いよろこびに気が遠くなる

短編映画『ザ・タッチ(The Touch)』(Jane Clark監督、2007年)

f:id:eureka0313:20181202162519j:plain

ルネ・ヴィヴィアンとトルコ外交官の妻ケリメ・パーシャ(Kérimé Turkhan Pacha, 1874-1948)との最後の逢瀬を描いた7分30秒の映画。Jane Clarkさん自身が設立した映画会社FilmMcQueen Productionsの公式サイトで予告編が見られます。Margaret Porterによる英訳が採用されております。
ちなみにこの映画、とても綺麗だし、興味深いですが、これだけだと何だかルネがただのエロ詩人みたいで、ちょっと残念。それと映画としてもあんまり短すぎて食い足りないですが、同じ女優さん(Necar ZadeganさんとTraci Dinwiddieさん)の組み合わせで『エレーナ・アンダン(Elena Undone, 2010)』(Nicole Conn監督、Jane Clark製作)という映画が撮られていて、こちらはもっと本格的なラブ・ストーリーのようで、空腹感が癒やされそうです。またJane Clark監督は現在も精力的に活動中で、公式サイトには『メス・ヘッド(Meth Head, 2013)』とか『クレージー・ビッチ(Crazy Bitches, 2014)』とか、面白そうなタイトルの映画の予告編が並んでいます。

ELENA UNDONE

ELENA UNDONE

 

*1:'The Muse of the Violets: Poems by Renee Vivien' (Naiad Press, 1977) より。

*2:同上。