魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

(日本語訳)ボードレール「道化とヴィーナス(Le Fou et la Vénus)」

ヤン・マテイコ「宮廷道化師」ウィキメディア・コモンズより。

何と素晴らしい日。この広い公園が太陽の燃ゆる眼下に失神している有様は、「恋愛」の支配下にある青春のようだ。
万象は音を立てずにエクスタシーを表現している。水そのものもまた眠れるがごとし。人間の宴会とは打って変わった、これは沈黙の狂宴オージーだ。
絶えず明るさを増してゆく一つの光が、物をいよいよ輝かせているかに見える。興奮した花々は、その色彩の覇気をもって、空の青さと張り合う欲望に燃えているかに見える。炎熱は香気を可視の白煙に変え、かの天体めざして立ち昇らせているかに見える。
にもかかわらず、この宇宙的歓喜のうちに、私がちらりと見かけたのは一つの悩み苦しんでいる存在だった。
巨大なヴィーナス像の足もとにいたのはあの作り物の狂人、すなわち悔恨や倦怠アンニュイに取り憑かれた王者たちを大笑いさせる責めを負った、あの意図的な笑われ役の一人だった。彼はぴかぴか光る、馬鹿げたコスチュームを身にまとい、つのやら鈴やらの付いた帽子をかぶって、石像の台座にかじりつき、涙に満ちた目で不死の「女神」を見上げていた。
その目は言っていた。「私はこの世でもっとも孤立した人間だ。友だちも恋人もなく、その惨めさにおいて、もっとも半端な畜生にもはるかに劣っている。にもかかわらず、そのような私もまた不滅の『美』を感じ、理解できるよう、生まれついているのだ。『女神』よ、どうかわが熱狂と悲嘆とに、お情けを」
だが無情の「女神」は、その大理石の目で、私の知らない何かを遠くに見つめている。

*『小散文詩集(パリの憂鬱)』7。原文はこちら