魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

(日本語訳)ボードレール「スープと雲(La Soupe et les Nuages)」

ギュスターヴ・ドレ「背後から刺殺される青ひげ」。1867年版『ペロー童話集』所収。ウィキメディア・コモンズより。

わが最愛のたわけ女に食事に呼んでもらって、私は開け放たれた食堂の窓から、が水蒸気もて造りたもうた揺れ動く建築、あの触知できないものによる驚くべき作品を打ち眺めた。見入りながら、私は独語した。「これらすべての幻灯ショーファンタスマゴリアは、わが麗しのひと、あの緑色の巨大な目をしたたわけ女のまなざしに、負けず劣らず美しい」
すると突如として私は背にこぶしの一撃を受け、ハスキーで魅力的な声、わが最愛のたわけ女の、ブランデーでしわがれたかのごときヒステリックな声が、このように言うのを聴いた。「よそ見せず、はやくスープを召し上がれ。愚にもつかない雲の商人…」

*『小散文詩集(パリの憂鬱)』44。原文はこちら