魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

佐藤賢一『黒王妃』

天一笑さんからレビューをいただきましたので掲載します。一天一笑さん、いつもありがとうございます。


佐藤賢一『黒王妃』講談社を読んで。

西洋歴史小説の第一人者、直木賞受賞作家佐藤賢一が、ユグノー戦争(1562~1598)の最中、アンリ2世王妃となり、夫の死後常に黒衣を着用し続けたカトリーヌ・ド・メディシスに、一人称・独白の手法を用いて挑む。
1533年の婚姻から程なくして、後ろ盾の教皇クレメンス7世(叔父)を亡くし、文字通り“一文の値打ちも無い嫁”(利用価値の無い)に墜ちてしまったカトリーヌは、フランス宮廷でイタリア文化の輸入(食文化・ナイフ・フォークの導入)・服飾文化(ランジェリーの導入)を梃子に長い年月をかけて、居場所を獲得してゆく姿を描く長編小説です(勿論、胆力・人間関係を調整する力もつける。教養もある)。
登場人物も当然華やかな面々です(夫王アンリ2世・愛妾デイアーヌ・4人の王子・プロテスタント)。
これらの人々が、宮廷内で権力闘争やら、宗教戦争を繰り広げる。
カトリーヌは、融和政策に舵を切るが、2つの泉から水を飲む女と揶揄され、上手く運ばない。
クライマックスは、1572年8月18日のナヴァール王アンリ・ド・ブルボンとバロワ王女マルグリット・ド・バロワの婚姻です。
この婚姻は、プロテスタントカトリックとの和解になる目論見だったが、コリニー提督が狙撃されて重症を負った事がキッカケとなり、怒涛の如く聖バルテルミの虐殺へと歴史は流れてゆく。
ラストシーンのカトリーヌの何者にも支配されない、堂々とした佇まいに皆さんはどの様な感想を持たれるでしょうか?
私はイタリア半島の平民出身から、青い血の流れる王族に生涯をかけてなりきった見事な女性の姿を感じます(代償は大きく子供6人?に先立たれる)。
中世の歴史・フランスバロワ王朝に興味のある方にお薦めします。

天一