血の噴水(La Fontaine de Sang)*1
しくしくと リズムに乗ってすすり泣く 噴水の音
俺の血の噴き出す音が 時として 微かに響く
さらさらと流れる音を この耳で確かに聞くが
体のどこを探しても 傷口などは見当たらない
騎士たちが一騎討ちする見世物の会場のよう
血は街を流れ流れて 舗石を島嶼にする
生きとし生けるものどもの 喉の渇きをうるおして
いたるところの風景を真赤な色に染めるのだ
俺をむしばむこの恐怖 一夜なりとも眠らせようと
暴飲によるごまかしに 一再ならず縋ったが
飲むことは かえって俺の目や耳を鋭敏にする
抱くことで すべて忘れて眠りたい そう願ったが
抱くことも俺にとっては 剣山の上で寝ることだ
心ない美少女たちに 生き血をすすられるだけだ
仲よし姉妹(Les Deux Bonnes Soeurs)*2
死と淫楽は仲よしだ まるで二人の美少女だ
元気いっぱい 愛いっぱい どんな相手も拒まない
襤褸をまとったそのからだ 処女のまんまのその子宮
いつも奉仕で忙しく しかも決して孕まない
富に無縁のお殿様 家庭を叩き出されても
無間地獄が大歓迎 そんな詩人の俺に対して
風俗店と墓場とが その暗がりに魅せるもの
それは決して後悔がおねんねしないあるベッド
かたや非情の棺台 かたや痴情のアルコーヴ
仲睦まじき姉妹かと 代わる代わるに差し出すものは
心を奪う恐ろしさ 身の毛もよだつ気持ちよさ
不潔な腕の淫楽よ いつごろ俺を殺す気か
美人姉妹のもう一人 死よ 君はいつ妹の
刺激臭ある天人花に その糸杉を接ぎ木する気か