破壊(La Destruction)*1
耳もとで 絶えず悪魔の声がする
空気のように 彼はただよう
吸い込むと 私の肺は焼けただれ
罪深い欲望で 永遠に満たされる
美に飢えた さびしい私を知る彼は
時として美貌の女子に変身し
おべっかで 私に猫をかぶらせて
くちびるを不潔な媚薬漬けにする
こうしてへとへとに疲れた私をさらに
神の目の届かぬ土地へ駆り立てて
倦怠の荒野へ深く分け入らせ
錯乱した私に彼は
どろどろに汚れた服や ずたずたに切られた傷や
真赤なものでべとべとの破壊の器具を見せびらかす
苦悶の錬金術(Alchimie de la douleur)*2
この世には自然を照らす者もいる
真っ暗闇にする者もいる
一人には「墓だ」と告げる存在が
「命だ 光だ」と他にはうそぶく
未知のヘルメス わが僕よ
俺はお前が怖いのだ
お前は俺をミダスにする
もっとも惨めな錬金術師にする
お前のせいで 俺は黄金を鉄に
天国を地獄に変えるのみならず
たなびく雲の白衣のうちに
最愛のひとの遺体を発見し
天空の波打ち際に 大いなる
エジプト石棺を乱立させる