美(La Beauté)*1
人間たちよ わたくしは石の夢ほど美しい
見るも触れるもことごとく 無事で済まないわが胸は
形而下に在る物質のごとく 不変で物言わぬ
愛を詩人の魂に 呼び覚まさんと作られた
蒼天の玉座に就いた さながら謎のスフィンクス
雪の心は 白鳥の色と一つに結ばれる
すっきりとした線が好き ぶれやずれなど大嫌い
決して笑うことがなく 涙を流すこともない
あたかも世界最大の記念物から盗ったかと
見紛うごとき わたくしの威容を前に 詩人らは
奥義を遂に窮めんと 時を費やすことだろう
それはわたくし 想い人たちを夢中にさせるため
一切を美化してみせる澄んだ鏡を持っているから
それは決して曇らない わが双眼だ 双の巨眼だ
狂気(Obsession)*2
お前が怖い 森林よ 寺院のように恐ろしい
オルガンみたいにお前が鳴ると 夢も希望もない胸が
陳腐な涙声がする永遠のお通夜の部屋が
「深淵より」の大合唱に 山彦を返すからだ
海よ お前が大嫌い お前の乱舞乱調を
わが精神に見る私 人生に敗れた者の
屈辱と涙に満ちた凄まじいげらげら笑い
私はそれを壮大な海の笑いに聞くからだ
だから私は夜がいい 星の光もない夜が
星の光は耳慣れた言語で語りかけるから
それは私は暗黒が 無が むきだしがいいからだ
にもかかわらず暗闇も それ自体 画面であって
わが眼差しが照らし出すその先々に 幾千の
亡き人々が生きており 懐かしそうにこっちを見ている