魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

(日本語訳)ボードレール「旅へのいざない(L'Invitation au voyage)」

ヤコブス・ストルク「オランダの川辺の城」ウィキメディア・コモンズより。

 わが子よ わが妹よ
 考えてごらんなさいな
あそこへ行って ともに住み
 とことん愛し
 愛して死ぬの
あなたにそっくりなあの国で
 霧にかすんだ
 空に浮かんだ
太陽の魅力はまるで
 涙にぬれた
 嘘つきなあなたの
目の不思議な魅力そのもの

そこにあるものは秩序と美と
贅沢と静謐と快楽とだけ

 年月としつきに磨かれた
 輝く家具に
二人の部屋は飾られ
 龍涎香りゅうぜんこう
 微香の入り混じった
咲き乱れる妖花のかお
 たえなる天井画
 奥の深い鏡
壁には東洋の逸品
 そこではすべてが
 そのふるさとの言語で
魂にそっと語りかける

そこにあるものは秩序と美と
贅沢と静謐と快楽とだけ

 ほら見て 運河に
 まどろむ船たち
彼らは生来の旅人
 あなたのどんな小さな
 夢でもかなえてみせようと
世界中から集まってきた
 沈む夕陽が
 野原や運河や
街すべてをいろどる色は
 ヒヤシンス そして金色きんいろ
 熱い光に包まれて
世界は眠りに落ちる

そこにあるものは秩序と美と
贅沢と静謐と快楽とだけ


*『悪の華』第二版53。原文はこちら