
夜空から舞い降りたのか 奈落の底に湧いたのか
美よ 神聖で凶悪な 君の瞳のひらめきが
まきちらすのは恩恵と罪の混じったきらめきだ
だから世間の連中は 君をワインに比較する
君はその目に曙と夕陽を併せ持っている
君は嵐の夜のよう 闇に薫りを漂わす
その口づけは媚薬入り そのくちびるは酒壺だ
英雄を痴漢と化して 少年に大志を抱かせる
闇の底から来たものか 星の空から来たものか
運命もまた犬のよう 君の裳裾に付き従う
禍福の種子を区別せず 気の向くままにばらまいて
一切を支配しながら 何一つ責めを負わない
死屍累々の上をゆく美よ 君は死を恐れない
恐怖は 君の宝石のうちでも 殊に美しく
殺人もまた数多い君の装身具の一つ
見せびらかした下腹の上で 華麗な舞を舞う
眩惑されて 燭光よ 飛んで火に入る蜉蝣は
炎上しながら君を讃えて「この燭台に幸あれ」と言う
美人の上に身をかがめ はあはあ言っている彼氏
自分の墓を愛撫する瀕死の人にそっくりだ
天から来たか 地獄から来たか どっちだろうとかまわない
美よ 強大で恐ろしい この純情の怪物よ
俺が焦がれる無限への未知のとびらを もし君が
目見で 歩みで 微笑みで 遂にひらいてくれるなら
神の使者でも魔の手先でも 天使だろうが人魚だろうが
かまわないとも もし君が 目もと涼しい妖精よ
リズムよ 薫りよ 星影よ 唯一無二のわが女王!
時の流れを加速させ 世の醜悪を減じるならば
*『悪の華』第二版21。原文はこちら。