世にリアクション動画ほどくだらないものはないと、常々思っております。他人様が作ったミュージックビデオを流して、横で「アア!!」とか「オオ!!」とか言って、ハイ出来上がり。こんな安直なもん、俺にでも作れるわ!!!(よう作りませんが)それでYouTubeの「おすすめ動画」で表示されても、リアクション動画は滅多に見ないのですが、BAND-MAIDのリアクション動画だけは好んで見ます。BAND-MAIDの動画を流しながら、横でリアクターたちが「アア!!」とか「オオ!!」とか言っているのを見るのが愉快でたまらないのです。先日、ようやく(というか、「満を持して」というべきか)BAND-MAIDの「HATE?」という曲の公式ライブビデオが公開されたので、私は冬眠から叩き起こされた形で、またぞろリアクション動画をあさっておりました。
BAND-MAIDを知らない方のために、少し紹介しておきましょう。BAND-MAIDは日本の5人組ガールズバンドで、5人のうちの2~3人(?)がメイド服(メイド喫茶の店員が着ているような)を着て「お給仕」(=ライブ演奏)をするところから「BAND-MAID」の名があるわけですが、ために日本では何か特殊な性的嗜好(?)を持った人たちに支持されているバンドだという偏見があるようで、さような偏見にとらわれない海外の人々にむしろ熱心なファンが多い。音を聞けばわかりますが、このBAND-MAIDは非常に高度な演奏技術を誇る、本格的なロックバンドで、古き良き時代のハードロックの伝統を受け継いでいる。それもただ単に形式的に受け継いでいるだけでなく、これに新しい価値を賦与しております。
下がその「HATE?」の動画ですが。
だいたい公式ライブビデオなどと申すものは(BAND-MAIDのに限らず)視点が切り替わるのが早すぎて、めまいがする感じで、ファンカムの方がむしろ臨場感があるように思うものですが、このビデオは曲のテンポに合っているせいか、見ていてそれほど苦痛を感じません。曲中、ベースのソロに合わせてリードギターの女の子の踊る姿がとても可愛い。
この「HATE?」という曲の歌詞については前にも書いたことがあります(こちらの記事)。これはわれわれ男性にとっては大変「耳が痛い」内容のものです。これについて、リアクション動画につけられた英語のコメントの中に「この歌詞は彩姫(メインヴォーカルの女の子)の親しい女友だちが彼氏に浮気されて、それに憤慨した彩姫が書いた」というのがあって、その情報はどこから来たものかと少し調べてみたところ、どうも日本語のインタビュー記事*1の英訳があいまいで、誤読されたもののようでした。このメインヴォーカルの女の子は「近頃有名人の不倫報道が(日本では)多いが、そのたびに女を裏切る男は許せないと思う」と言ったわけです。もっともこの歌詞の内容は、世の男性一般に対する怒りというよりは、やはり何か個人的体験に基づくもののような気がしますが。
私を使って満たす自己顕示欲…
このフレーズの字幕での英訳、
Just using me to make you feel you have meaning.
これはなかなかの名訳ですね。薄っぺらで、中身のない彼氏の胸に、グサリと突き刺さる言葉のナイフです。その次の、
10分そこらのショボい運動…
というのも、ギョッとさせられるセリフですが、さらにその次の、
たーいしたこともないのに!!!
たーいそうに!!!
まー、このクッソ憎たらしいイントネーションはどうでしょうか?しかもセカンドヴォーカルのコーラス付きです。海外のリスナーには、この辛辣さはなかなか想像がつかないだろうと思います。それだけ血の通った日本語でもあるわけです。
あーあーバカみたいだ!!!
繰り返しになりますが、BAND-MAIDの音楽は、ハードロックの王道を行くのみならず、これに新しい息吹きを吹き込むものです。チャラチャラしたステージ衣装とはうらはらに、そこには何かしら技術以上の「ピュアな魂」のごときものが、演奏にも感じられるし、歌詞にも感じられる。これまた私の大好きな「Warning!」という曲の歌詞に、
エラそうに もったいぶって
「愛」とか歌わないで!!!
とある通り、この「HATE?」はそこらのラブソングよりも、もっとまっすぐに「愛」を伝えてくれます。