魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

クリスティナ・ロセッティ「エコー」他二篇

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ギュスターヴ・ドレ「天使らがレノアと呼ぶ少女」。poestories.comより。

 

象徴たち(The Symbols)

私は長いこと見守っていた
太陽と雨と露とで育った薔薇のつぼみを
開花する日を楽しみにしながら
強い花を夢みながら
ところがある朝 それはほころびたかと思うと
夕方には枯れてしまった

私は来る日も来る日も見守っていた
心地よい影に満たされた緑の巣を
中にはまだら模様のたまごが三つ
ところがそれがかえるはずの五月
二羽の親鳥は怖くなったか
嫌になったかして 飛び去ってしまった

そこで私は薔薇の枝をへし折った
きっといい匂いの花を咲かせるだろうと思って
あんなにも世話をしたのに
私は小鳥のたまごを踏みつぶした
あんなにも固い約束を交わしたのに
私は復讐がしたかったのだ

ところが芝生の中の枝が物を言った
つぶれたたまごたちが問いかけてきた
「私たちの失敗がお気に召さなかったのですか?
そのお怒りは正当ですか?そうして天にまします神様は
あなたの人生が失敗に終わった時に
同じ仕打ちをなさるでしょうか?」

エコー(Echo)

会いに来て 夜のしじまの中を
会いに来て ひと夜の夢の 物言うしじまの中を
会いに来て 元気な顔で せせらぎのおもてに映る
日ざしのように目を輝かせて
会いに来て 涙を拭いて
追憶よ 希望よ 何年も前に終わった恋よ

甘い夢 甘すぎる夢 苦痛なまでにこころよい夢
目覚めれば死後の世界
恋人たちは再会
待ち焦がれる目
ひらくとびらを見つめ
結ばれた者は二度と別れることはないゆえ

けれど会いに来て 夢でいいから それは私がひとり
ただ生けるしかばねとして 人生を生き抜くために
会いに来て 夢に出てきて それはあなたとわたし
息と息 脈と脈とを通わせるため
そばに来て ささやいて
あの日のように 恋人よ 遠いあの日のように

冬:私の秘密(Winter: My Secret)

秘密を打ち明ける? いいえ 滅相もない
そりゃ何時いつかわね 知らないわ
でも今日は駄目 風が吹いて 雪が降って 氷が張って 
そうしてあなたは物好きで! やれやれ
聞きたいと言うのね! なるほど
ただし 私の秘密は私のもの 打ち明けたりはしないわ

それに本当は秘密など何もないのよ
すべてが終わってみれば そこには何もなくて
ただ私の酔狂があるだけ
今日は風が人を噛む日 人をつねる日
こんな日は誰しもショールやら ヴェールやら クロークやらで
自分を隠したいもの
私はノックする誰にもドアを開けない
けれど心ない風は玄関からひゅうひゅうと吹き込んできて
私のまわりで飛んだり跳ねたり
踏んだり蹴ったりギョッとさせたり
私を包んでくれるすべてのものの隙間を突いたり刺したりするの
私は仮面マスクを着けます 誰がこのシベリアの寒さに
自分の鼻づらを丸出しにして
風の突っつき放題にさせていられるものですか
突っつかないでくれる? ご厚意に感謝するわね
信ぜよ されど未だためされざる真理は捨ておけ

春は心がのびのびする季節 だけど私は
春塵の三月にも
驟雨と虹の四月にも
遅霜が降りる明け方
花が枯れる五月にも信が置けない

たぶんあるけだるい夏の日
眠そうな鳥のさえずりは次第に途絶え
金色のフルーツは過度に熟れつつ
空には太陽がいっぱいでも雲がいっぱいでもなくて
風は強くも弱くもないある日に
私は打ち明けるかも知れない
その前にさとられるかも