「DAZE」の歌詞
上の動画につけられた誰かのコメントにもある通り、まことに「心癒される美しい楽曲と映像」で、思わず何度も見入って(聴き入って)しまうのは私だけではあるまい。で、こうしてこのDIABLEVOIX(以下「ディアブルボア」とカタカナで書く)なるバンド(?)に興味を持ったわれわれ物理メディア世代の人間が、とりあえずこの曲の入ったCDを買ってみたいと思ったとしても無理はあるまい。ところが(少なくとも私の場合)アマゾンに注文を出しておいても「未入荷」のまま一向に届かないので、先日やむを得ずキャンセルし、タワーレコード・オンラインから入手しました。他のオンライン・ショップを見ても品切れとなっているところが多いようで、これはレアものということになるのかも知れません。
さて、この曲のCDを入手した目的の一つは、この曲の歌詞を確認するためであった。日本のポップソングのCDを買うと、オマケとして「歌詞カード」なるものが添付されていることが多い。他方、現時点(2025年2月現在)では、「歌ネット」などでこのディアブルボアの「DAZE」の歌詞を確認することはできない(というか、「歌ネット」にも「うたてん」にも、ディアブルボアの曲は一曲も登録されていない)。そんなら今回入手したCDの歌詞カードからの情報に基づいて、このブログで歌詞を全文公開してやろうかとも思うが、それはこの曲を書いたZechs(以下「ゼクス」とカタカナで表記させていただきます)さんとおっしゃる方のコピーライトを侵害することになるので、遠慮して、下に部分的にご紹介します。
まずいわゆる「サビ」の部分、
すれ違い 壊れてゆく
さよならさえ言えず 失くしてしまった
何度も傷つけ合い 後悔して
寄り添って泣いた
とても易しく、優しく、きれいな日本語で、歌うヴォーカルのHaluka(以下「ハルカ」と書きますね)さんの声もとても美しい。今ちょっとグーグル翻訳で英訳してみますと、こんな感じになります。
We are drifting apart
Qur relationship is falling apart
We couldn't even say goodbye
We lost everything
I can't forget the days we hurt each other
We regretted it
And we cried together so many times
短い間奏をはさんで二番の歌詞に続きますが、ここでベースのソロとともに、林間から月が現れるシーンが実に美しい。
終わらない悲しみ
消えてしまいたい恐怖
聞こえてくる声に
これに続いて英語のフレーズが何回か繰り返されるのですが、歌詞カードでは「I wanted you now」となっているが、私の耳には「Crying on for you now」と聞こえる。
一人きりの寒い夜は
安息にはちょうどいいね
ここでの「安息」は「永遠の眠り」といったニュアンスかと思われる。最後の二行、
も一度 君に
帰るよ あの日へ
少し分析的に書きますと、上の一行目は「もう一度君に会いたい」の「会いたい」が省略された形、二行目は「あの日へ帰るよ」の文節が倒置された形です。助詞の「に」と「へ」の使い分けで、これがわかるのです。日本語の面白いところです。
なお、上の動画で、最後のピアノのソロパートのところでピアノが「炎上」してしまいますが、もちろん「ピアノがもったいない」とおっしゃる向きもあるでしょうが、私はとてもいい演出だと思います。胸がえぐられる気がします。
DIABLEVOIXの謎
上の動画のエンドロールで、この「ディアブルボア」のメンバーらしき人名がズラリと出てくるので、これはいわゆる「ヴィジュアル系ロックバンド」の一つなのかと勘違いしそうですが、実はそうではない。
「アイドル」という日本語は、もともと意味があいまいな上に、時代に連れて意味が大きく変わっていくような気がするので、あまり使いたくないのですが、どうも今の時代、「アイドル」とは比較的小さな会場で、カラオケをバックに歌ったり踊ったりするパフォーマーを指すようで、何人かの人が楽器を持って舞台に上がる「バンド」とは対照的な概念らしい。で、この「ディアブルボア」というのは、とあるアイドルグループに所属していたヴォーカルのハルカさんが、音楽的指向性の違いからこれを脱退して一人で立ち上げたところの単独アイドルプロジェクトといふ事になつてゐる。少なくとも今のところ、日本語版ウィキペディアにはそれ以上の情報はありません。
しかしここでどうしても無視できないのが、上にも名前が出てきたベーシストのゼクスさん(上の動画の中では女装されているようですが、れっきとした男性)とおっしゃる方の存在です。この方は非常に優れたソングライターで、この「ディアブルボア」のナンバーのほとんど(全部?)を手掛けているようで、しかもそれが皆たいそう美しい。のみならず、同じ芸能事務所に所属する他のアイドルグループにも楽曲を提供されている。ただあまり表に出たがらないタイプの方のようで、一部のコアなファンはともかく、われわれ外部の人間にはまったく謎に包まれた人物です。とはいえ上の「DAZE」の動画や、このひとつ前の「us」というシングルのミュージックビデオでも、ハルカさんとともにこのゼクスさんの姿がフィーチャーされているので、要するにこの「ディアブルボア」とは、ハルカさんとゼクスさんの二人による(表向きは「アイドル」形式の)音楽ユニットという認識で、それほど間違ってはいまいと思われます。
上の「DAZE」の動画のコメント欄を見ると、ヴォーカルのハルカさんの歌唱に難癖をつけるものが散見しますね。そりゃハルカさんより声域の広い歌手はいくらでもいるでしょうし、声量のある歌手もいくらでもいるでしょうよ。そんなことを言い出せばどの分野でも同じで、上を見ればキリがないのです。ことアートに関する限り、作品の価値を決めるものは技術力ではない、独自性です。持って生まれた弱点をむしろ逆手にとって、誰にも真似のできない独自色を打ち出してこそ、アーティストの呼称にふさわしいのではないでしょうか。そこであらためて感心するのがこのゼクスさんの曲の書き方で、この方はハルカさんの声の不思議な魅力を徹底的に研究し、そこから最大限のものを引き出そうとしているかに見える。また機会があれば、この「ディアブルボア」の他の楽曲もご紹介したいと思います。