わからないわよ あなたには
「死んだことのない人が、死んだ人のことがわかるかな」――山下清
わからないわよ あなたには
一度は死んでみなければ
二度も三度も殺された
女子の気持ちはわからない
胸を刺されて失血死
突き落とされて墜落死
果ては焼き場で焼死して
もう肉体はぼろぼろよ
肉体よりも精神よ
心の傷は癒やせない
からだは買えば済むけれど
心はそうは行かないの
愛した人に殺されて
その愛人に殺されて
親にも子にも殺されて
もう精神もぼろぼろよ
少し寿命が長いだけ
少し苦労も多いのよ
だけどわたしは不老不死
気にしない 気にしない
だからあなたは知らないの
あなたは何も知らないの
一度わたしと死んでみて
いい経験になるかもよ
地下に監禁される日々
Ⅰ
地下に監禁される日々
罪を重ねるこの遊び
さらさらと鳴るこの鎖
中毒になるこの薬
今日は狂人 あす死人
だからしなくていい避妊
抱かれたいから脱いだ服
父さん 遊ぶ金が浮く
ねえお父さま このわたし
紳士に奉仕する天使
好きにしていい人形よ
もう人間は廃業よ
縄でしばって鞭で打ち
吊せば みごと地獄堕ち
死んだわたしを抱きしめて
浮いたお金でうるおって
Ⅱ
地下に監禁される日々
罪をつぐなうこの遊び
さらさらと鳴るこの鎖
楽に死ぬならこの薬
今日は犯人 あす死人
ちなみに彼はもう他人
今の奥さん 超美人
今の愛人 大詩人
だけどわたしは不老不死
歴史に奉仕する天使
千年生きているお化け
死ぬのはいつも他人だけ
どうせ効かないこの薬
しっかり飲んで死んだふり
生き返るまでひと眠り
起きてびっくり また独り