
(エルンスト・クリストフに捧ぐ)
巨大なブーケ 手袋に ハンカチーフもばっちり決めて
貴婦人然と 堂々と 生けるがごとき出で立ちの
白骨死体 屈託のなさと砕けた物腰は
少し危険な小悪魔の細いからだを見る風情
この細腰は 他のどんな舞踏会でも見られない
王族のゆとりを持った その法外なドレスの裾が
落ちかかる 涸びた素足 こいつをきゅっと締めつける
ポンポンで飾った靴の 花さながらの愛らしさ

鎖骨の端でひらひらと戯れているこのフリル
岩をさらさら撫でている 落ちるともなき水のよう
乙女心が男性の目にさらすのを許さない
死者のエロスを 上品に包み隠してくれている
暗黒と空洞で出来た目は 底知れぬほど奥深く
優しい花の冠を着けた可憐な頭蓋骨
ほっそりとした脊柱の上で ゆらゆらゆれている
この狂おしく着飾った「虚無」の姿の美々しさよ
人肉に酔い痴れている恋人たちは 人体の
骨格が持つ 絶妙な風情を理解しないから
君の姿をひと目見て 悪趣味戯画と呼ぶだろう
高身長の骸骨よ 君は好みのタイプだよ
そもそも君は命ある者の宴を その強面で
邪魔しにやってきたのかい それとも何か見果てぬ夢が
世間知らずのお嬢さん 一度は死んだ身を駆り立てて
この淫楽の魔宴へと 君をみちびいたのですか
ヴィオロンたちの歌声や キャンドルたちの輝きで
その安眠をかき乱す淫夢を一掃したいのか
その胸中に点火した業火のごとき怨恨を
酒池肉林の狂宴に 癒やしてたもれと願うのですか
馬鹿さ加減とあやまちの 尽きることなき源よ
昔ながらの悲しみの 稼働を止めぬ蒸留器
僕には君の肋骨の窓のむこうに 毒ヘビが
エサを求めて 今もなお さまよう様が見えるのだ

実はいささか心配なのさ 君が男の気を引いて
媚を売っても ことごとく骨折り損に終わるかと
世の軟弱な男子らの 誰が悟るか この妙味
強心臓の者にのみ 恐怖は魅力的なのだ
恐ろしい思想に満ちた 君の両目の深淵は
めまいを放射するゆえに 君に気づいた男らは
三十二枚の君の歯が浮かべる 永遠の微笑みを
激しい吐き気を覚えずに 見つめることはできまいよ
とはいえ 誰が骸骨を抱きしめたことがないだろう
誰が死肉で空腹をしのいだことがなかろうか
コスメ 香水 コスチューム くその役にも立つものか
怒るやつらは みずからを欺いているだけなのだ
鼻を失くした舞姫よ 魅力に満ちた淫売よ
ゆがんだ顔を見せつける殿方たちに 言ってやるがいい
「思い上がったあなたたち いくらうわべを飾っても
どいつもこいつも死臭がするわ 麝香の薫る骸骨たちよ
お年を召した美少年 ひげを剃られた色男
ニスを塗られたご遺体よ 白髪頭の漁色家よ
『死の舞踏』なる 万人を乱舞せしめるこの舞いは
あなたたちをも巻き込んで 未知なる場所へ連れて行く
セーヌの凍る河畔から 灼熱のガンジス川の
ほとりにかけて 舞い踊り 正体もない諸国民
天の一角なる暗黒の銃口こそは 一切の
終わりを告げる 天人のトランペットと気づきもしない
笑止きわまる『人類』よ どんな場所でも 時代でも
『死』は皆さんが披露する珍妙な芸に大よろこび
時に みんなの真似をして 身に没薬を焚きしめて
愛憎劇の狂態に 皮肉で華を添えるのよ」
*『悪の華』第二版97。原文はこちら。