魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

『吸血鬼カーミラ(Carmilla)』「プロローグ」

 ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ(Joseph Sheridan Le Fanu, 1814 - 1873)作『カーミラCarmilla, 1872)』のeureka0313による日本語訳です。テキストはプロジェクト・グーテンベルク版に拠っております。それではスタート。

プロローグ

本稿に付された書類の中で、ヘッセリウス博士はかなり綿密な注をつけて、この手記が提起している奇怪な問題について、彼の「エッセイ」を参照するよう、書き込みをしている。
その「エッセイ」において、彼は日ごろの博識と炯眼もさることながら、注目すべき率直さと凝縮とをもって、この難問を取り扱っている。とは言え、それはこの偉人が遺した厖大な論文集の一巻を成すに過ぎない。
編者はもっぱら「一般大衆」の興味をそそるために、本稿を世に問うところから、これを物した利発な女性の許しを得ることなしに、彼女の名を公表することは差し控えたい。またそれゆえ、当然の配慮から、あの博学の士の推論のあらましを述べたり、彼が「人間の生と死という二つの状態、およびその中間の状態に関する、深遠きわまるアルカナを、恐らく含んでいる」としたこの問題について、その説くところの一部を紹介することも、見合わせることにした。
本稿を発見した際、編者はヘッセリウス博士がこの女性と何年も前に開始した文通を、再開したいと切に願った。彼女はまことに聡明かつ細心で、得がたい情報提供者と思われたからである。しかし残念ながら、音信が途絶えている間に、彼女は他界していた。
とは言え、たとえ彼女が健在であったとしても、本稿に手を加える余地は恐らくほとんどなかったであろう。編者に判断できる限り、これはそれほど誠実に書き綴られているからである。