魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

最近観たYouTube動画から

2023年5月、デトロイトのセント・アンドリュース・ホールでのBAND-MAIDウィキメディア・コモンズより。

「朗報」としてのBAND-MAID

よその国はどうか知らんが、少なくとも今の日本においては、国民のほとんどが時代に絶望し、自分自身に絶望している。これだけは間違いのないことのように思われます。
わが国の国力は衰退の一途をたどっている。これについては、誰一人としてなすすべを知らない。政治の責任を問う声もあるが、そもそもこの状態の根本的要因、すなわち人心の腐敗という要因は、行政や教育が今さら何とかできる問題ではありません。このような事態を招いたのは、戦後の無理な経済復興そのものに、さらに言えば、78年前に終わったあの戦争そのものに原因があるのです。われわれは戦禍から不死鳥のごとくよみがえろうとした。だが残念ながら、われわれは不死鳥ではなかったのです。
これはあくまで日本国内に限っての話ですが、毎日のように報道される「異常」にして「現代ならでは」の事件、毎日のようにネットの掲示板やコメント欄に書き込まれる「常軌を逸した」意見、そうして(私はもうSNSとは縁を切ったので本当のところはわかりませんが)おそらくSNS上では今なお毎日のようにやり取りされているであろうところの多くの「狂気じみた」誹謗中傷と同様に多くの「狂気じみた」賞賛の嵐、わけのわからん「提案」もしくは「誘惑」の数々とこれらに不随関連するもろもろの空しい労力と時間の浪費。このありさまを眺めていると、「われわれは一体何のために生まれてきたのだ?」と天に向かって問いかけたくなるのはむしろ人情というものでしょう。
従って、この国のこの時代において、もはや何をやっても無駄だと開き直るのもアリかとは思いますが、ひょっとすると、あきらめるのはまだ早いかも知れません。これは私としては比較的最近になって――特に昨年(2022年)の秋以降、BAND-MAIDの音楽を本格的に多く聴くようになってから抱き始めた印象です。特にあの(すでに何度も触れておりますが)「from now on」のごとく時代を超越した観のある名曲については、これに接するたびに、「今の日本もそれほど捨てたものではないかも知れん」との想いを強くするのです。確かに国力の衰退は覆うべくもないが、これに対して国内の創造的なパワーは、これに抵抗する形で、かえってこれに反比例して高揚しているのかも知れない。むしろ今の日本には、世界レベルのレジェンドを誕生させる機運が高まりつつあるのかも知れない。その一端が、このBAND-MAIDというロックバンドの活動にうかがわれるのではないか。そんな気がいたします。
「from now on」のリンクは前にも貼ったので、ここでは新曲「Shambles」のリンクを貼っておきます。


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上の曲を聴いて、個人的に想いを新たにするのは、BAND-MAIDの活動力の源泉には、何かしらフラストレーションもしくはジレンマのようなものが横たわっている気がする、という話は前にもしました。これはもちろんメンバー個人個人の性的欲求不満というような低レベルのものでは全然なく、またコロナ禍の活動制限によるストレスというような一時的なものでもない。ではその正体は「世界征服」の野望がなかなか達成されないところから来る憤懣でしょうか。だとすると、理屈の上では、この野望が達成された瞬間にBAND-MAIDの音楽は終わる、ということになりますが、どうもそういうものでもないらしい。とすると(前にも指摘した通り)それはやはり日本におけるジェンダーギャップなのでしょうか。今の日本は沈みゆくタイタニック号で、映画なら女子供から優先的に救命ボートに乗せるところでしょうが、今の日本の男性は、自分一人が助かるためなら、女性を何人犠牲にしてもかまわないかのように見える。しかしこのような悲惨な状況は、BAND-MAIDのような女性アーティストたちにとっては、むしろ有利に働くのです。それだけモチベーションが上がるからです。

CARAMEL CANDiDのことなど

BAND-MAIDの動画は、最近のUSツアーのファンカムの類もたくさん観たので、その感想も書きたいところですが、長くなるのでまたの機会に譲るとして、BAND-MAID以外の動画の中で、一番驚いたのはやはりこれでしょうかね。


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音楽と映像のギャップが凄まじい。このアーティスト、かつて某有名アイドルグループに所属していた元アイドルとのことですが、幸か不幸か、私は全然存じ上げないので、むしろ単なる一新人アーティストとして、今後を見守りたいと思います。
これに負けず劣らず衝撃的だったのが下の動画です。


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この「CARAMEL CANDiD」というのは4人組のガールズバンドだそうですが、このバンドのサウンドは、他の楽曲を聴くと、きわめて古いロック――「はっぴいえんど」とか、こちらの記事で触れた「ジャックス」とかの音を連想させる。ここで一つ指摘しておかなければならないのは、こうした古い形式の音楽(BAND-MAIDもそうですが)は、おっさんがっても「二番煎じ」に終わるだけですが、若い女性がると、そこに新しい生命が吹き込まれる。古い形式が新しい意味を帯びるわけです。そういう意味では、今はむしろ男性アーティストの方が不利な時代だとも言えると思います。
もう一つ、注目に値するのは歌詞ですね。この「CARAMEL CANDiD」はYouTubeでは、今のところまだ2曲しかオリジナル曲を公開しておりませんが、どちらの曲も(BAND-MAID同様)、歌詞にたっぷりとを含んでいます。「日本のアーティストは社会問題にコミットしたがらない」という話を、こちらの記事にラッパーの方が書いていらっしゃるが、私はラップにもヒップホップにもまったく興味がないのですが、洋楽ファンの端くれとして、非常に強く同感するところであり、また日本のロックの海外のリスナーからもたびたび指摘される点でもありますが、時代は変わりつつある――日本は変わりつつある、という印象を、私は受けます。
他にも面白い動画が多々あるのですが、予定の文字数を大きく超えてしまったので、この辺で。