魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

「ウーマン・ラブ・ウーマン」

先ほどchigaharuさんのブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/chigauyoharukachan )でアニメ「舞-HiME」のファンフィクションを読んでいて、登場人物の以下のようなセリフに行き当たりました。別に「舞-HiME」のことは何も知らなくても、シチュエーションは大体想像が付くのではないかと思いますので、説明は省きます(chigaharuさん、ちょっと無断で引用させていただきます。すいません)。

「だってそうでしょう?若いうちは、後ろ指を差される。適齢期になれば、親には早く結婚しろと言われる。同性と暮らしたりしたら、どんな関係か、と近所からも職場からもひそひそ噂される。いい年もして結婚しないなんて、欠陥品みたいに言われる。仕事をしていても、何をしていても、まるで変質者のような目で見られる。ましてカミングアウトしたら、家族には人間じゃないみたいに罵られる」

とまあ、これは序の口で、

「それでも、若いうちはいいかも知れません。けれど、五十年後、六十年後はどうするのですか?どんなにがんばったところで、同性同士では、双方の血を受け継いだ子供は生まれないのですよ?身寄りのないまま、どこかの老人ホームか、田舎の寂しい一軒家か、都会の薄暗いアパートで、しなびた乳房をまさぐりあいながら寄り添って生きるのですか?子供の成長もみることができない、訪ねてくれる孫もいない、そんな孤独な、死ぬのを待つだけの未来を生きるんですか?」

普通ライトノベルなどで、ここまで辛辣な書き方をする例は少ないんじゃないかと思いますが、さらに、

「藤乃さん、あなただって年老いるんですよ?いつまでもその美しい姿は保てないんですよ?まあ、玖我さんには振られてしまったようですが、もし別の人を選んだとしても、その相手だって、いつかはしわだらけになるんですよ。そうなった時でも、相手を愛し続ける覚悟はおありですか?相手に愛され続ける自信はおありですか?まして、相手がノンケだった場合、そんな変態な道に引っ張りこんで、地獄を見せるおつもりですか?好きになった相手に、そんな重荷を負わせるおつもりですか?」

これを読みながら私の頭に二つのネタが浮かんでまいりまして、その一つは「ウーマン・ラブ・ウーマン」という三話オムニバス映画の第一話のこと、もう一つは先日から書きあぐんでいるナタリー・バーネイさんの伝記の中の「老いらくの恋」のエピソードです。
「ウーマン・ラブ・ウーマン」というアメリカ映画は、なかなか面白い映画で、どこが面白いかというと、それぞれ異なる時代の三つのエピソードを通じて、同性愛者を取り巻く環境の変化が巧妙に描かれているからです。ちなみに「ウーマン・ラブ・ウーマン」というのは日本人が勝手につけたタイトルで、原題は確か「ある家にまつわる物語」みたいなタイトルだったと思います(今ちょっと調べ物をしている時間が無いので、記憶に頼って書いています)。時は二十世紀後半、舞台はある庭付きの一軒家で、そこで暮らしていた三つの時代の人たちの言動が描かれます。それぞれ西暦何年の出来事かというのがちゃんと画面に出てきたと思いますが、正確な数字を覚えておりません。ただ第一話は冒頭にオードリー・ヘップバーン主演の「噂の二人」という同性愛映画、また第二話では部屋の壁にジャニス・ジョプリンのポスター(彼女はバイセクシュアルだった)が貼ってあるところが出て来ますので、だいたい時代の見当が付くわけです。
さて、その第一話の内容ですが、これはまだ同性愛者の人権に対する配慮などというものが全く顧みられなかった時代の話です。
冒頭で、先ほど触れた「噂の二人」という白黒映画のクライマックスシーン(非常に悲劇的な)を見ながら、二人の老婦人が手を取り合ってオイオイ泣いております。ところが後ろの席から若者たちの嘲笑の声が上がりますと、二人の涙はピタリと止まる。彼女たちは仮面をかぶって生きている。事実上夫婦で、確か三十年間連れ添ってきたという設定だったと記憶しますが、二人とももともと学校の先生で、長年こつこつ働いてお金を貯めて、そのお金で手に入れた家で今は静かな老後の生活を営んでいます。
ところがこのカップルのうちの一人が庭で転倒して、そのまま意識不明の重体に陥ってしまう(仮にA子さんとします)。もう一人のB子さんは、病院に搬送されるA子さんに付き添いますが、病院の職員はB子さんにこう尋ねる。
「ご家族の方ですか?」
「いいえ、親友です」としかB子さんは答えられない。
「ご家族の方を呼んで下さい」と職員は言います。
A子さんもB子さんもほとんど身寄りがありません。B子さんは昔A子さんの甥にあたる人に(彼がまだ子供だった頃に)会ったことがあるのを思い出して、連絡を取り、駆けつけたこの甥御さんのおかげで、亡くなったA子さんの葬式を出すことができます。ところが葬儀が終わってからB子さんにはじめてわかったことは、この家から出て行かなければならないということでした。この家についてB子さんにはいかなる法的権利もなく、すべてはこの甥御さんの手に渡るというのです。この甥御さんというのはなかなかいい人で、B子さんの行く末をいろいろと心配してくれるのですが、この甥御さんの嫁さんというのがムカつく女で、若くて美人で、おまけにとんでもない業突く張りで、もはやこの家の中にあるものはすべて自分たちのものだから、B子さんには指一本触れさせないという態度を取る。何一つ報われることなく、B子さんは失意のうちに世を去ってゆく…細部に記憶違いがあるかも知れませんが、大体そんな話でした。

 

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