魔性の血

リズミカルで楽しい詩を投稿してまいります。

(日本語訳)ボードレール「あるマドンナに(À une Madone)」

スペインはサラマンカの「悲しみの聖母」像。ウィキメディア・コモンズより。

(スペイン風の奉納品エクス・ヴォート

マドンナよ わが恋人よ あなたのために この僕は
わが悲しみの奥深く 地下神殿を築きたい
世のくだらない連中の 冷やかしの目の届かない
僕の心の地下室の 一番暗い片隅に
狭い窪みニッチをくりぬいて きんと青とで塗り上げて
目を丸くした人形よ そこにあなたを立たせたい
僕はあなたをうたむ 混じり気のない金銀の
格子細工をめぐらして 水晶の韻をちりばめた
うたをあなたに 大いなる宝冠として捧げよう
そうして生けるマドンナよ 僕は自分のジェラシー
はさみを入れて 一着のコートとしよう その柄は
野蛮で 生地はごわごわで 疑惑の裏が付いていて
兵士がひそむ小屋のよう 女性の武器を隠すのだ
これの刺繍はことごとく真珠パールにあらず 僕の
あなたの上着ローブ それはわが欲情とする ゆるやかな
起伏を描く欲情の 寄せては返すその波は
高きにあればゆらめいて 低きにあれば静まって
白とピンクの全身をひとつのキスで覆うのだ
それから僕は履き物を作ろう 僕のプライド
洒落たサテンの靴にして 聖なる足に踏ませよう
その柔らかく 心地よく素足を包む履き心地
忠実まめな鋳型が原形をしかととどめて守るに似たり
技術の粋を尽くしても 像の台座に 白銀の
のひとつも彫れぬとあらば 僕はあなたの足もとに
わがはらわたを食い破るを代わりに押し込もう
それはあっぱれ 贖罪の能力ちからゆたかな聖母さま
およそ憎悪とつばきとで膨れ上がったこの怪物を
靴のかかとでさんざんに踏みつけにしてもらうため
仰げば 花で飾られた聖なる処女の祭壇前の
キャンドルの列さながらに 青空色あおぞらいろの天井を
僕の慕情が 満天の星と飾っているだろう
それはギラギラ光る目で あなたをじっと見るだろう
そして全身全霊であなたを慕うこの僕は
安息香乳香没薬となってくゆり立ち
嵐をはらむわが精神は 絶え間もあらず 真っ白な
雪の峰なるあなたへと 蒸気となって立ちのぼるだろう

最後に 僕のマリア様 あなたの役の総仕上げ
優しい愛に飽き足りず いささか野趣を織りまぜる
黒い遊びのよろこびよ 僕は恨みをつのらせた
死刑執行人の役 七つのをことごとく
研ぎ澄まされた七本の凶刃として持ち構え
人間らしい感情の麻痺した魔術師のごとく
ダーツの標的まとのこの女体 これの一番熱いところに
すべて命中させてやる あえぐあなたの心臓
嘆くあなたの心臓に 血が止まらないその心臓に!


*『悪の華』第二版57。原文はこちら