
あらゆる蛮行が、オルタンスの凶行を侵す。彼女の淋しさ、それは性愛のメカニズム。彼女の物憂さ、それは恋のダイナミズムだ。幼き日々の見守りのもと、数多くの時代を通じて、彼女はもろもろの血筋の凄まじき衛生術であった。彼女のとびらは悲惨に向かってひらかれている。そこで生身の人間のモラルは、彼女の激情もしくは活動のうちに、肉体を離れる。――血まみれの土の上の、発光する水素による、初恋また初恋の恐るべきわななきよ、オルタンスを探せ。
*ラコスト版『イリュミナシオン』38。原文はこちら。

あらゆる蛮行が、オルタンスの凶行を侵す。彼女の淋しさ、それは性愛のメカニズム。彼女の物憂さ、それは恋のダイナミズムだ。幼き日々の見守りのもと、数多くの時代を通じて、彼女はもろもろの血筋の凄まじき衛生術であった。彼女のとびらは悲惨に向かってひらかれている。そこで生身の人間のモラルは、彼女の激情もしくは活動のうちに、肉体を離れる。――血まみれの土の上の、発光する水素による、初恋また初恋の恐るべきわななきよ、オルタンスを探せ。
*ラコスト版『イリュミナシオン』38。原文はこちら。

黄金の階段から――シルクのリボンや、灰色のガーゼや、みどりのビロードや、日ざしを浴びたブロンズのごとく黒ずむ水晶の円盤やによって取り巻かれて――私は銀線と、眼光と、髪の毛とで粗く編まれたカーペットの上に、あのジギタリスのつぼみがほころびるのを見る。
瑪瑙の上にばらまかれた金貨、エメラルドのドームを支えるマホガニーの柱、白いサテンのブーケおよびルビーのかぼそい枝々が、真清水の薔薇を取り囲む。
空と海とは、真っ青な巨眼、および雪のすがたを持つ神のごとく、これに吸い寄せられて、大理石のテラスの上に、年少くして壮んなる薔薇がむらがる。
*ラコスト版『イリュミナシオン』23。原文はこちら。

あなたとわたし 水入らず
行き交う人は見ず知らず
ささやきかわすカフェテラス
そこへA子が水をさす
「これは美人のB子さん
それに詩人のC子さん
美人と詩人 花と蝶
時にわたしは委員長
取り出だしたるこの写真
肌もあらわにご乱心
出来ているのは誰と誰
女子の情交 法に触れ
口止め料はまず二万
あとは毎週二十万
地獄の沙汰も金次第
やってられないこの時代」
風紀委員はパパラッチ
あっちこっちで撮るエッチ
卑劣きわまる隠し撮り
処女にとっては命取り
取り出だしたるこの写真
A子さんこそご乱心
B子C子とベッドイン
紙面に躍るその女陰
目をむいているこのむすめ
その首筋に刺すとどめ
白目をむいてしたたらす
ジュースも甘いカフェテラス
さよなら 風紀委員長
いつか地獄で会いましょう
これで二人は水入らず
行き交う人は見ず知らず
今日もご機嫌うるわしい
見目うるわしいお姉さま
そのほほえみは謎のまま
天使のように美しい
私なんかと恋に落ち
あなた幸せ 不幸せ
ゆすりたかりの悪い癖
吸わずにおれぬその生き血
だってあなたはスキだらけ
今日も奪った甘いKISS
咲いた真っ赤なアマリリス
あなたはいつも傷だらけ
なのにあなたは笑うだけ
そのほほえみは謎のまま
だから教えて お姉さま
こんな私が好きなわけ
「好きだから
好きなだけ
恋をするなら命がけ
それがほんとの恋だから」
今日もあなたは上機嫌
何万年も昔から
地下に埋もれていた宝
それが不滅の美の起源
美しいのはあなただけ
その内面は美の宝庫
わが正体は魔性の子
美しいのは見かけだけ
人の心はスキだらけ
男女を問わず声をかけ
からだで釣って落とすわけ
あとは骨までしゃぶるだけ
なのにあなたは笑うだけ
そのほほえみは謎のまま
だから教えて お姉さま
こんな私が好きなわけ
「好きだから
好きなだけ
あなたの愛が欲しいだけ
それは宝の山だから」

某女子寮の昼下がり
あなたとわたし 美女ふたり
優雅にお茶を喫すれば
窓のほとりに鳴く小鳥
鳥というより豚の声
いいえ 確かに人の声
それは窓下の草むらに
眠る少女のいびき声
あの子 確かにうちの寮
男子有料 女子無料
校舎のうらの草むらで
からだを売っている不良
どこか可愛い阿呆づら
誰が呼んだか「白い薔薇」
その正体はただの馬鹿
お茶うけなどにどうかしら
声をそろえて歌ううた
「あなた あなた」と呼ぶあなた
「お茶はいかが」と問うわたし
いびきが止んだ 目があいた
お茶の用意をする二人
こっそり混ぜるこの薬
ひと口飲めば あら不思議
夜空の星の仲間入り
まずは脱がせて悪ふざけ
写真に撮ってぼろもうけ
ああ罪深き昼下がり
あとは生き血をすするだけ
さっと開いたその扉
現われたのは「白い薔薇」
何と凛々しいその姿
天使と呼んでいいかしら
真っ赤になったこのおもちゃ
ひと口飲んだ紅いお茶
血相変えて立ち上がり
言い出したのはこんな無茶
「あなたとあなた うちの寮
男子有料 女子無料
校舎のうらの草むらで
からだを売っている不良
不死身となって千年目
ここで会ったが百年目
同じ血を引く吸血鬼
罪を重ねていては駄目
犯した罪を悔いましょう
ともに命を絶ちましょう
絶やしましょうよ 魔性の血
報いは天にあるでしょう」
あなたとわたし 美女ふたり
ひしと抱き合う昼下がり
不死身となって千年目
こんな出会いはひさしぶり
美人ぞろいのわが一家
白い両手は血で真っ赤
ともに命を絶つ話
書いて売ったら大作家
ああ 麗しの「白い薔薇」
味見をしてもいいかしら
同じ血を引くその証拠
見せてもらっていいかしら
脱いで脱がせてつく吐息
触れ合う性器 はずむ息
ああ罪深き昼下がり
みんな感激 虫の息
魅せてもらったその魔性
わたしに次いで二等賞
真っ赤なお茶で乾杯だ
晴れて姉妹となりましょう
にわかに効いてきた薬
夜空の星の仲間入り
われら魔性の三姉妹
三日経ったらよみがえり
美人ぞろいのわが一家
白い両手は血で真っ赤
書いて売りたいこの話
夢は流行作家とか

澄ました顔をするなかれ
耳を澄ましてほしいだけ
真犯人は誰かしら
あなた以外にいるかしら
殺されたのはA子さん
文芸部では最古参
校舎のうらの草むらで
夕陽を浴びて死んでいた
そのなきがらは 今もなお
寮のベッドに横たわり
寝返り打って くしゃみして
いびきをかいているという
わたしが暮らすこのクラス
秘密だらけの花畑
紋白蝶に揚羽蝶
時にわたしは委員長
美貌の少女 B子さん
天使のようなC子さん
大事にしたいD子さん
いつもいい子のE子さん
澄ました顔をするなかれ
耳を澄ましてほしいだけ
耳に入れたいこの話
入れたら 耳が痛いかも
他人の胸をさわるより
自分の胸に手をあてて
耳が痛くはないかしら
それとも 耳が遠いのか
真犯人は誰なのか
誰がA子を殺ったのか
その首筋に いつまでも
消えない傷をつけたのか
真犯人はC子さん
そう言ったのはB子さん
男 男と言いながら
実は女を食っていた
証拠はあるの
証拠はこれよ
いきなり脱いで見せる馬鹿
見てもいいわよ身体中
見てもいいけど授業中
みんな注目 キスマーク
今日の教師もまた狂死
真犯人はC子さん
そう言ったのはD子さん
きれいな手口 きれいな血
それが彼女の殺し方
そしてわたしはお嫁さん
しかももうすぐお母さん
お腹の中に子どもさん
その父親はC子さん
そこまで言ったD子さん
校舎の窓を開け放ち
校舎のうらへ飛び降りて
真っ赤な花がまた咲いた…
開け放たれた窓辺から
下を見ているわたしたち
紋白蝶に揚羽蝶
時にわたしは委員長
未来はとても甘いから
お花畑は蜜だらけ
手と手を結ぶむすめたち
触れ合っている花と花
澄ました顔をするなかれ
耳を澄ましてほしいだけ
真犯人は誰かしら
それはわたし と風が言う…
流れているわ 姉妹たち
流れているわ 姉妹たち
それは誰の血
D子の血
たぶん駄目だわ あきらめて
そんな馬鹿なとB子さん
信じられぬとC子さん
開け放たれた窓辺から
D子 D子と呼ぶE子
草のかげから現れて
大丈夫よとD子さん
無論狂言 お騒がせ
魅せる芝居を見せただけ
馬鹿馬鹿馬鹿とB子さん
信じていたとC子さん
白い両手で抱きしめて
いい子 いい子とE子さん
今日も誰かの赤い血が
流れているに違いない
流れているに違いない
むすめを結ぶ魔性の血
遊ぶ写真部
寝ころぶ猫部
あくびしている新聞部
やってきたのは
悪名高い
風紀委員の美少女だ
「遂に出ました 殺人鬼
それは美貌の吸血鬼
校舎のうらの草むらで
処女の生き血を吸っていた」
「校舎のうらの草むらで
処女の生き血を吸っている
当女子寮の恥さらし
それはあなたのことでしょう」
「何をおっしゃる 部長さん
風紀委員は聖戦士
寮の平和を守ります
少しお金ももらいます
亡くなったのはA子さん
文芸部では最古参
校舎のうらの草むらで
夕陽を浴びて死んでいた」
「言われなくても知っている
次はB子よ 美味な子よ
真犯人はC子さん
明眸皓歯 不老不死」
「さすがは部長 ご名答
しかし足りないその証拠
手ごわい敵は吸血鬼
明眸皓歯 不老不死
風紀委員は負けません
遊ぶお金が足りません
処女のからだをもてあそぶため
からだを張って巻き上げた
これが証拠のフォトグラフ
売ればうるおうこの財布
買ってください 部長さん
愛はお金が要るのです」
遊ぶ写真部
寝ころぶ猫部
あくびしている新聞部
「それであなたは
あの美しい
C子に愛を告げたわけ?」
「脅迫状を書きました
やってきました C子さん
犯した罪の恐ろしさ
うしろめたさに伏し目がち
『可愛い風紀委員さん
わたしに何をする気なの?』
『何もしません C子さん
少しお金が欲しいだけ…』
「校舎のうらの草むらで
そっとひらいたその財布
胸がわくわく
物理に化学
金貨銀貨がザックザク
カメラ片手にもてあそぶ
指に甘美なその陰部
しくしくと泣くC子さん
げらげら笑うこのわたし
これがうわさの吸血鬼
ばっちり撮ったその性器
買ってください 部長さん
そしてわたしをうるおして」
死んだ写真部
寝込んだ猫部
破って捨てた新聞部
その他数名
売店を出て
風紀委員を取り囲む
「可愛い風紀委員さん
白いその手をひっこめて
きれいなようで汚ない手
もうその手には乗らないわ
死者が出るのは当然よ
C子は死ねる女なのよ
『時』が磨いた宝石よ
ダイヤモンドよ サファイヤよ
美少女戦士 大天使
その正体は吸血鬼
寮の平和を乱す者
正義の剣を受けてみよ」
遊ぶ写真部
寝ころぶ猫部
あくびしている新聞部
集客力は
ゼロに等しい
尾頭つきの吸血鬼